注目が高まるマイルドハイブリッド。日本の技術で普及に加速がかかりそう

2017年07月30日 14:22

ローム0725

ロームが「Nano Pulse Control(R)」により開発した電源IC「BD9V100MUF-C」。マイルドハイブリッド車をはじめとする48V系車載電源システムの進化を促す、電源システムの 1chip 化を実現。

 近年、世界の自動車市場では、HV(ハイブリッド)やPHV(プラグインハイブリッド)に次ぐ技術として、マイルドハイブリッドへの注目が急速に高まっている。

 トヨタのプリウスなどですっかりお馴染みのHVはご存知の通り、エンジンと電気モータを併用することで燃費の向上と二酸化炭素の排出を抑える画期的なシステムである。日本でこれまで主流となってきたのは、100V以上の高電圧電池とモータを搭載して、エンジンが停止した状態でも蓄積した電気で走行できるストロングハイブリッドと称されるものだ。これに対し、マイルドハイブリッドは、あくまでエンジンを主要動力源として使用しつつ、停止時や発進時などエンジン駆動時には比較的小型の電池とモータでアシストするもので、ディーゼルに代わるものという表現をされることもある。

 ストロングハイブリッドはエンジンと電動モータを走行条件によって使い分けることで、高効率な出力配分で走行することを可能にした優秀なシステムで、大幅な燃費向上が期待できるが、開発費がかかり、車両価格が高額になってしまうという難点もある。新興国ではこれがネックになって、販売台数が伸び悩んでいる傾向がみられるようだ。それに比べてマイルドハイブリッドは、電池の使用目的はエンジン駆動時のサポートであるが故に電気自動車モードで走行することはできないものの、1つの小型モータと蓄電池を用いたシンプルな仕組みのため、自動車メーカーとしても開発が容易で、比較的安価に燃費改善も期待することができるという大きな利点がある。このコストパフォーマンスの高さがウケ、欧州や中国などの新興国を中心に爆発的に普及し始めているのだ。

 これまでHVやPHV中心だった日本の自動車関連メーカーも、マイルドハイブリッドへの関心を高めている。例えば、四輪車の販売台数世界第10位、国内販売台数第3位を誇るスズキは昨年、ソリオやワゴンRといった同社の人気車種にマイルドハイブリッド車をラインナップして話題となった。もともと、スズキはこれまで、マイルドハイブリッドに近い技術をS-エネチャージと称して軽自動車に搭載していたが、ここにきてマイルドハイブリッドをうたい始めたのは、同社のハイブリッド技術がある程度確立したことによる差別化と、国内を含めた世界の自動車市場に向けたアピール的な意味合いもあるのだろう。

 自動車部品メーカーも同様だ。日立製作所傘下の日立オートモティブシステムズ株式会社は昨年、マイルドハイブリッド車両向けに、BMS基板、セルに加え、リレー、ヒューズを一体実装した、積載性の高いオールインワンパッケージの高出力48Vリチウムイオン電池パックを開発し、2018年の量産に向けて動き出している。同製品は低温特性に優れ、従来の同社製電池セルと比較して約1.5倍の出力密度を実現している。

 また、半導体メーカーのロームも先日、48V系電源で駆動する車載システム向けに、車載に求められる 2MHz 動作(スイッチング)で業界最高降圧比を達成した MOSFET 内蔵降圧DC/DC コンバータ「BD9V100MUF-C」の開発を発表している。

 世界的にマイルドハイブリッドへの注目が高まってはいるものの、これまで車載システムに必須の 2MHz動作を常時行いつつ、ECU(Electronic Control Unit)を駆動させるために必要な3.3Vや5Vに、48Vから直接降圧できる電源IC が存在しなかったため、2つ以上の電源IC を使用し、12V などに中間電圧をつくって2段階で降圧する必要があった。そこでロームは同社の先端アナログ技術を結集して、超高速パルス制御技術「Nano Pulse ControlR 」を開発し、電源システムの 1chip 化を実現した。これにより、アプリケーションの小型化、システムの簡略化を一気に実現することが期待されている。

 日本ではまだ認知度も低いマイルドハイブリッドだが、世界的な普及に合わせて、これからは国内市場でも注目が高まりそうだ。今後、日本の技術によりマイルドハイブリッドの技術がさらに進化していくかもしれない。(編集担当:松田渡)