厳しい環境・安全規制が国内販売バイク市場から、数多くの名車を駆逐する皮肉

2017年08月26日 07:03

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2013年に発売した生誕55年記念の完全純国産「Honda Little Cub」限定車。当時の価格は24万9900円だった

 国内二輪各社が、国内の環境規制・安全規制強化に対応したラインアップ見直しを急ピッチで進めている。先般報告したとおりホンダ技研は、ロングセラーモデルである50cc原付一種のプレジャーバイク「モンキー」の半世紀におよぶ販売を終了した。

 また、50cc原付一種のホンダ製ビジネスバイクで唯一国内生産モデル。その熊本製作所でつくっていた「リトルカブ」の生産も終える。リトルカブは、49ccの空冷4サイクル単気筒OHCエンジン(3.4ps/7000rpm、0.39kg.m/5000rom)を搭載。燃料供給システムはホンダ四輪車で自慢の電子制御「PGM-FI」で、変速機は4段リターンだった。

 ヤマハ発動機も販売全体の3割強にあたる15モデルの生産を終える。バイク市場全体が、1980年代ピーク時の約1割程度の37万台/年に縮んだ市場状況に対応した対策といえる。

 二輪車の環境基準である欧州「ユーロ4」が国際基準となり、それに合わせる恰好で、この9月から日本国内の既存モデルに適用される排出ガス規制は、ほぼすべてのバイクにCO(一酸化炭素)などの排出量を従来の半分程度にするよう求めることとなった。2020年以降は、さらにその規制は強化される見込みだ。

 また、環境規制とは異なるが、四輪車で1990年代に全車標準搭載となった、制動時の安全性を確保するABS(アンチロック・ブレーキ)の搭載も2018年からすべてのバイクに義務化される。

 国内二輪トップのホンダは、国内販売74モデルのうち24モデルですでに環境・安全規制への対応を終えた。残り50モデルのなかで、ビジネスバイクの代表「スーパーカブ」などはいったん生産を中止した後、規制に対応した新車種を追って投入するとしている。

 排気量50cc未満の原付一種は、国内排気量別バイクでもっとも販売台数が多い。が、日本独自規格のガラパゴス・バイクとされている。新興国を含めて国際的な小排気量バイクの下限は125ccで、先に記した環境対策装備を搭載、安全装備搭載強化しても、その総生産台数の規模が大きく、何とかコスト吸収が出来る。が、国内販売だけに頼る50cc未満の原付一種は、そうはいかない。販売減、規制強化という二重苦で、相対的に安い価格帯では環境機器搭載のコスト吸収が難しいのだ。

 国内バイク販売で2位にあるヤマハは、47モデルのうち30%超の15モデルの生産を終える。ただ、ロングセラーの人気クラシックなスポーツバイク「SR400」などは規制に対応する新型を投入するという。

 スズキは40モデルのうち11モデルが新規制に対応した。大型スクーターなどは、欧州モデル「バーグマン400」に統一するなど対応を進める。川崎重工業は19モデル中6モデルが対応済みだ。が、クラシックな単気筒中型バイクでヤマハSRと人気を二分してきた「エストレヤ」などは生産終了を決めた。

 国内バイク市場の縮小と環境・安全規制が、歴史的にも存在価値のある名車たちを駆逐する皮肉な現況となった。(編集担当:吉田恒)