日本共産党の志位和夫委員長は26日、東京都の小池百合子知事が関東大震災での朝鮮人犠牲者追悼式に追悼文を送るのをやめ「特別な形での追悼文の提出は控えた」としたことに「天災による犠牲者と、虐殺による犠牲者は全く異なる。『特別扱いしない』とは、虐殺・加害の歴史を意図的に風化・忘却しようというもの。都知事の判断は厳しい批判を免れない」と重大問題と提起した。
1923年9月1日の関東大震災を契機に起きた殺害事件については、日本弁護士連合会が2003年7月に当時の小泉純一郎総理に対し「国は関東大震災直後の朝鮮人、中国人に対する虐殺事件に関し、軍隊による虐殺の被害者、遺族、および虚偽事実の伝達など国の行為に誘発された自警団による虐殺の被害者、遺族に対し、責任を認め、謝罪すべき。国は、朝鮮人、中国人虐殺の全貌と真相を調査し、その原因を明らかにすべき」と勧告している。しかし、この件に対し、政府は動いてこなかった。
政府の記録に残っているだけでも、9月1日、外泊休暇中の兵士が朝鮮人1名を撲殺。3日、東京府両国橋西詰付近で1兵士が朝鮮人1名を射殺、同日、東京府大島町3丁目付近で3名の兵士が朝鮮人を銃把で殴打したことがきっかけで群衆・警察官と闘争がおこり、朝鮮人200名が殺害された。4日、千葉県南行徳村下江戸川橋北詰で1軍曹が兵士2名に命じて朝鮮人5名を射殺等々「軍は震災後の混乱の中で、理由なく朝鮮人を多数虐殺しているのであり、 殺害事件に関する国の責任は重いといわなければならない。また、これらの事件は裁判・軍法会議のいずれにもかからなかった」とし「軍隊による朝鮮人殺害の事実と国の責任を明らかにすることの意味は大きい」と勧告している。
殺人被害者にはこの勧告書をまとめるにあたっての調査で「朝鮮人、中国人のみならず、社会主義者と目された日本人、朝鮮人と間違われ殺害された人などが知られている」としている。
この件に関しては当時、参議院議員だった田城郁氏が昨年5月に質問主意書で(1)政府は関東大震災時における朝鮮人、中国人等の虐殺事件に日本政府が関与したことを事実として認定するか(2)日本弁護士連合会の「関東大震災人権救済申立事件調査報告書」及び「勧告書」(日弁連総第39号2003年8月25日)はどの機関が受理し、内容を精査したのか。「勧告書」への対応をどうするかについてどのような検討を加え、回答しないという結論に至ったのか説明せよ、と提出。
安倍内閣は昨年6月、「関東大震災時における朝鮮人、中国人等の虐殺事件に日本政府が関与したことについては、調査した限り、政府内にその事実関係を把握することができる記録が見当たらないことから、答えることは困難」と回答。
日弁連の勧告に対しても「平成15年8月29日付けで内閣官房において受け付け、同年9月3日付けで警察庁及び法務省に回付したと承知している」としたうえで「内容を精査したのか。どのような検討を加え、回答しないという結論に至ったのか。調査した限りでは、政府内にその事実関係を把握することができる記録が見当たらないことから、お答えすることは困難」と記録が見当たらないなどと回答し、再調査する気もないような回答になっている。
これに対し、関東大震災朝鮮人虐殺の国家責任を問う会は「質問主意書では、日本弁護士連合会が朝鮮人、中国人虐殺に国の責任があると認定したこと、総理大臣以下全閣僚も構成員である内閣府中央防災会議の報告書にも、政府・軍隊や警察が流言の伝達と朝鮮人、中国人殺傷事件に関わったことを指摘している。内閣総理大臣に出された日本弁護士連合会の勧告と中央防災会議の『災害教訓の継承に関する専門調査会報告書』の双方で、政府による朝鮮人、中国人虐殺への関与が事実として認定されているにもかかわらず、どうして政府内に記録がないと言えるのか。当時の戒厳司令部が記した記録や防衛省を始めとした公的機関に保管されている記録以外に、いったいどのような記録が必要なのか」と安倍内閣の対応に強く抗議し、抗議声明を発表している。(編集担当:森高龍二)