太陽光発電に代わる住宅市場のトレンドZEH。標準仕様の先にあるもの。

2017年09月24日 14:28

画・ブロックチェーン活用で余った電力を個人間で売買

補助金が終了した2014年度を境に、太陽光発電システムは減少傾向にある

 矢野経済研究所が2017年5月~7月の期間で実施した、国内の次世代住宅関連主要設備機器市場(7品目)の調査によると、市場を牽引していた太陽光発電システムの縮小の影響によって市場全体では縮小傾向にあり、末端販売額ベースで前年度比87.7%の7191億4000万円と推計している。

 補助金が終了した2014年度を境に、太陽光発電システムは減少傾向にある。FITの買取価格の下落も進んでいることから、売電での経済的メリットも以前ほどの訴求力はなく、住宅メーカー各社も売り方を模索しているのが現状のようだ。一方、太陽光発電システムに代わって、これからの成長が期待されているのが「蓄電池」と「ZEH」の普及だ。

 シードプランニングの市場調査によると、日本国内の住宅用・業務用・公共産業用蓄電システムの市場規模は、2024年には2016年比5.6倍強となる約3,700億円の市場に成長すると見込んでいる。中でも、戸建て住宅用蓄電システムが市場を牽引し、住宅用・業務用が74%を占めるとみている。予測販売台数は42万台で、2016年度の11.4倍になる。

 そして、注目すべきはZEHの約4割に搭載されると予測していることだ。つまり、これからの住宅販売において、蓄電池とZEHは切っても切れない重要なキーワードとなることは間違いない。そして太陽光発電も今後は単体の販売ではなく、これらと組み合わせることで、建物やコミュニティ全体の省エネ、エネルギーを最適化するための、より高度な省エネシステムとして進化することが望まれるだろう。

 政府もZEHの普及・促進に力を入れており、2020年までに受注住宅の50%以上をZEH仕様とする目標を宣言・公表したハウスメーカー及び工務店、建築設計事務所などに対し、「ZEHビルダー」と認定する制度を設けるなどの施策を進めている。2017年上半期の時点で6000社以上が登録しており、この数は未だ増加傾向にある。

 それに伴い、住宅メーカー各社もすでにZEH仕様の住宅に力を入れている。大手の住宅メーカーでは、すでに受注住宅の50%以上を達成しているところは珍しくない。

 セキスイハイムでは、2014年時点ですでに、新築住宅のうち66%でZEHを達成しているし、パナホームは、パナソニック100周年となる2018年には戸建全商品の100%ZEH化を公表している。

 また、中堅住宅メーカーでも、木造注文住宅を手がけるアキュラホームは、独自の「未来基準の仕様」を設定し、同社の手掛けるZEH住宅への訴求力を高めている。同社は9月から「未来基準」の具体的な商品として「MIRAI ZEH(ミライ ゼッチ)」の販売を始めており、これは太陽光発電7.25kWを標準搭載した上に、アルゴンガス入りの樹脂複合サッシ、オール電化住宅、省令準耐火構造とすることで、国の基準を超える高性能+ZEH基準の高スペック仕様の住宅となっている。

 近い将来、太陽光発電システムやHEMSなどとともに、ZEHも住宅の標準仕様となってくるだろう。しかし、経済産業省による定義が漠然としていることも注意しておきたい。「住宅の高断熱化と高効率設備等によって年間に消費する正味(ネット)のエネルギー量を概ねゼロとする」ものであれば、その手法等は実際のところ、住宅メーカーに委ねられているのが現状だ。それだけに各社、自社の得意分野を活かした付加価値を付けた商品開発に取り組んで、他社との差別化を図ろうとしているようだ。消費者側としては、ZEH仕様というだけで満足せず、さらにその先を見越した価値の高い住宅を選択したいものだ。(編集担当:石井絢子)