UCバークレーとMIT、太陽エネルギーのみで大気から飲料水抽出する技術

2017年05月30日 06:53

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世界では全人口の約3分の2が何らかの水不足に直面している。さらには、世界人口の約66%にあたる約40億人が、1年間のうち1カ月以上も、適切な真水の供給を得られずに生活していることが、科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に発表された。

 世界では全人口の約3分の2が何らかの水不足に直面している。さらには、世界人口の約66%にあたる約40億人が、1年間のうち1カ月以上も、適切な真水の供給を得られずに生活していることが、科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に発表された。農業用水の利用などにより、人口が急増しているアジアなどで水不足がより深刻となっており、水不足解決のために、雨水を利用するうえでの使用効率向上や、海水から塩を取り除けるフィルターの開発などさまざまな取り組みがなされている。

 こうしたなか、周囲の太陽光エネルギーだけで大気中に含まれる水分を取り出し、飲料水として使えるようにする技術を、米カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)とマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが開発した。作製したプロトタイプの装置では、湿度20%という乾燥した環境下でも12時間で2.8リットルの水が大気から得られたという。水の入手が極めて難しく電力網もない砂漠のような場所に加え、一般家庭でも空気から飲み水を作り出せる新たな手法となる可能性がある。

 大気中には13兆キロリットルもの水分が存在すると推定されている。これまでにも大気中の水分を取り出す研究は行われてきたが、ある程度の湿度と電力が必要だった。この装置では、「MOF(有機金属構造体)」という人工多孔質体を活用。MOFでは、立体構造の隙間にガスや水分を取り込む性質を持つ。UCバークレーで20年以上前に発明されたMOFのパウダー版「MOF-801」の提供を受け、今回、MITの研究チームが極めて省エネルギー性能の高い水分抽出装置を開発した。装置内のMOFの粉末が大気中から水分を吸収した後は、容器を透過する太陽光の熱で粉末から水蒸気を分離し、復水器で水に戻して蓄える仕組み。

 粉末から水分を遊離させるエネルギー源は太陽光だけでなく、焚き火を活用することも可能だという。実験では12時間で2.8リットルの飲料水を作り出すのに、1キログラムのMOF-801を必要とした。さらに、実験に使ったMOF-801は自重の20%までしか水分を保持できないが、倍の40%以上まで吸収率を高められる可能性があるという。今後、アジアの人口は25億人に達すると予測され、必要な食を確保するためには、現在の2倍の食糧が必要とされる。同装置の高度化・量産化が進むことで、さらなる水不足の解消手段となる可能性がある。(編集担当:久保田雄城)