2016年度の建機レンタル市場規模は約1兆3500億円へ拡大する見通しとなり、底堅く推移した。建設業がICT化に向け動き出した今、メーカーとユーザの橋渡し役として建機レンタル業界の動向が注目されている。
東日本大震災や熊本地震、北海道豪雨などの災害と隣合わせに存在するのが復興需要だ。自然災害の多い日本では、地震や地球温暖化の影響による強い台風や集中豪雨などが増加し、災害リスクがより強まっている。そのような災害の防止や、被害拡大時の復興事業において建設機器(以下、建機)は重宝されており、今後一層その活躍が期待されている。
しかし、一般的に建機の価格は高額で、かつ工事期間のみ必要となるため、保有リスクの高さやメンテナンス、建機の移動コストなどの負担も重荷となる。そこで、生まれるのが建機レンタルへのニーズだ。経営の効率化・合理化・安定化を求め、建機レンタルへの依存度は年々高まっており、建機は買う時代から使う時代へと移行している。
日本建設機械レンタル協会の推計によると、2016年度の建機レンタル市場規模は約1兆3500億円(前年比1,100億円増)へ拡大する見通しとなり、東京五輪関連工事や首都圏の大規模再開発工事の漸次着工により底堅く推移した。
近年、各地で頻発している自然災害の復旧・復興、道路や上下水道を始めとしたインフラの老朽化対策、20年の東京オリンピック・パラリンピック開催を見据えた建設工事などの内需により、更なる市場拡大が予想されているが、短期的な“特需”が終わり、工事後の反動減が起きる可能性が指摘されているなかで、各社はASEAN諸国を始めとする新興国においてインフラ整備などの建機レンタル需要を取り込む事業体制を本格化させている。
関西に拠点を持つ業界第2位の西尾レントオール〈9699〉は海外事業の拡大を目指し、1992年にマレーシアに現法を設立以降、タイ、シンガポール、ベトナム、インドネシア、中国(ニシオティーアンドエム香港)と東南アジア各地に海外拠点を設け、アジア展開の強化を行っている。さらに、昨年、今年と続いてオーストラリアにおける地元企業の子会社化をすすめており、フォークリフト事業や高所作業などに特化した地元企業とのグローバルな連携を進めている。また同社は、他社に先駆け、2000年には情報化施工への取組みを本格化、国土交通省が推進する「i-Construction」の普及活動や技術開発にも積極的に取り組んでいる。一方で、北海道を拠点とする業界最大手のカナモト〈9678〉は今年1月に九州地盤のニシケンを子会社化、国内営業基盤の拡充、とりわけ東京五輪やリニア中央新幹線などの関連工事が今後盛り上がる、関東エリアでの拠点増設やトンネル工事に注力。関東では過去1年半に5拠点を新設して、36拠点まで増加。「今後さらに強化していきたい」としている。
建機レンタル市場は、災害復興と老朽化したインフラの再整備、東京五輪などによる内需の拡大が予測され、インドを中心としたアジア、アフリカなど新興国の市場拡大に伴う海外需要も進む傾向にある。需要の地域差が大きく需給バランスの調整が難しい、中国などの景気変動による影響を受けやすい等の課題もあるが、見通しは概ね明るいといえる。建設業がICT化に向け動き出した今、メーカーとユーザの橋渡し役として建機レンタル業界の動向が注目されている。(編集担当:久保田雄城)