消費者庁では、東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、「風評被害に関する消費者意識の実態調査」を平成25年2月より年2回行っている。平成29年8月の実施が第10回目となり、被災地域(岩手県、宮城県、福島県、茨城県)と被災地産品の主要仕向先である東京などの都市圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県)の消費者を対象として、5,100人余りから回答を得た。
まず、食品の産地を気にする理由について聞いた。「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」は減少傾向にあり、放射性物質を理由に福島県産品の購入をためらう人の割合はこれまでの調査で最少となった。食品中の放射性物質を理由に購入をためらう産地についてはどの地域も第4回以降減少傾向にあり、特に福島県産品の購入をためらう人は、第1回の19.4%より6.2%下がり、これまでの調査で最も少ない13.2%となった。
食品購入時に重視しているものを聞いたところ「価格」と回答した人の割合は全体の中で最も多かった(第1回77.8%→第10回65.0%)。次いで、「鮮度」(60.4%)、「消費期限・賞味期限」(59.5%)が続いており、「品質(味)」は前回から5ポイント以上減少し(第9回64.0%→第10回58.8%)、4位となっている。食品中の放射性物質の基準値や出荷制限に関する意識や理解については、基準値の数値についての知識は減少傾向から低い割合で横ばいとなり、食品の検査について、「行われていることを知らない」と回答した人が約4割(37.5%)。さらに、出荷制限の情報について「情報は特に得ていない」と回答した人が最も多くなった。2位に「テレビやラジオ」「新聞や雑誌」が続き、消費者が食品中の放射性物質の検査に関する情報を入手する機会が減少していることが伺える結果となった。
基準値以内の放射性物質のリスクを受け入れられると回答した人はここ1年半増加傾向にある。線量の放射線リスクの受け止め方については、「基準値以内であれば、他の発がん要因(喫煙、毎日3合以上飲酒、痩せすぎなど)と比べてもリスクは低く、現在の検査体制の下で流通している食品であれば受け入れられる」(31.2%)と「放射性物質以外の要因でもがんは発生するのだから、殊更気にしない」(19.3%)を合わせた、一定のリスクを受け入れられると回答した人は第1回から減少傾向を示していたが、第7回以降は増加傾向で(第1回58.6%→第7回46.1%→第10回50.5%)、第10回は第5回以来の50%超となっている。一方、「十分な情報がないため、リスクを考えられない」(第1回22.8%→第10回29.0%)で増加傾向となった。「基準値以内であっても少しでもリスクが高まる可能性があり、受け入れられない」と回答した人は第4回から20%前後で微減傾向となっている。
放射線等の基礎的な知識や人体影響についての理解については減少傾向が一服し、第6回以降同水準で推移。放射線のリスクの知識について、人体に影響があるという知識と比べ、体内に入ったセシウムは30日で半減するといった影響が低くなる方向の知識を知っていると回答する人が少なく、10%に満たない水準で推移した。(編集担当:久保田雄城)