景気拡大が4年めを迎え、各企業の生産性や業績、有効求人倍率も向上している。その反面景気が拡大していると実感できる人は決して多くはない。好況の実感が乏しい背景にあるのは、企業や個人の「慎重姿勢」が関係している。
新聞などのメディアで「景気拡大」の文字が踊る日が増えてきた。これは、内閣府が2012年12月に始まった景気拡大の局面が4年目を迎えたことが関係しており、戦後2番めの長さとなった「いざなぎ景気」に並ぶ長さだという。こうした景気の拡大は様々な幅広い業種での生産性向上などが景気の拡大に大きく関わっており、株価も高値を更新する等順調な推移を見せている。しかし、日常生活において景気拡大を実感として感じている人は少ないのではないだろうか。
いざなぎ景気は戦後の高度経済成の後期の時代である。この時代の特徴といえば、カラーテレビやエアコン、自動車といった様々な商品が登場し日常生活に普及していったという点にある。つまり、一般家庭における個人消費が大きく伸びた時代でもあった。それに対して今回の景気拡大は、有効求人倍率が初めてすべての都道府県で1倍を超えるといった特徴があり、いざなぎ景気の時代と異なり雇用における状況が好調となっている。その反面、個人消費の伸び率が低く賃金が上がっているというわけでもない。景気が拡大していると内閣府が発表し各メディアで報道されていても、その実感がないのはこうした点が影響しているといえるだろう。
様々な業種で生産性が向上し、求人が増えたとしても実際に使うお金そのものが増えなければ消費の拡大にはつながらない。この点がいざなぎ景気の時代と大きく異なる点である。事実、GDPの伸び率は1.3%と低水準であり、これはバブル期の7%と比較してもかなり低い数字である。その背景にあるのは企業や個人の慎重姿勢だ。銀行や企業の破綻が相次いだ時代を見てきた世代が中心となっている現在は、消費をするよりも将来に備えて蓄えることを優先しているという考え方である。企業は賃金にお金を回すのではなく蓄えることを考え、これは一般家庭の消費者についても同様の考え方のため、消費の拡大につながっていかないというわけである。
経済が回っていくためには、消費が拡大することが重要であることは言うまでもないが、こうした慎重な姿勢が景気拡大を実感できない大きな要因ともなっている。ただし、企業の業績そのものは好調なところが増えているため、このまま好調な状態を維持することができれば賃金向上や消費が拡大する可能性も十分考えられる。景気拡大といわれても日常生活に何らかの還元がなければ意味がない、これは誰しも思うことだろう。景気が良くなったと実感できるような日が来ることを願うばかりである。(編集担当:久保田雄城)