海外から国内へ 企業拠点の現在

2017年10月23日 06:09

画・海外から国内へ!企業拠点の現在

中国などの海外ではこれまで低コストで運用できるメリットがあったが、人件費の上昇に伴い生産拠点を国内に移行する動きが出てきた。こうした国内回帰は雇用創出や景気回復のきっかけになるのではないかと期待する向きも多い。

 日本の製造業の生産拠点といえば海外が中心であることは周知の事実だろう。特に中国には多くの日本メーカーが生産拠点を置いている国として知られており、低コストでたくさんの商品を製造することができる点がその理由である。そんな海外拠点についてだが、国内への移行が進んでいるという。

 そもそも日本が生産拠点を国内から海外へ移行することになった背景には低コストで運用できるというメリットがあったからだ。どんなメーカーであっても無から有を作り出すような錬金術を持っているわけではない。商品を開発するためにはコストをかける必要があるが、良質な商品ほどコストがかさみ、結果的に利益も少なくなる。海外へ進出する起業が多かったのは、低コストで良質な商品の開発・製造が可能だったからである。それが海外から国内へ移行するようになった要因といえるのも、そのコストが大きく影響している。

 特に、これまで日本企業の生産拠点を多く構えていた中国は近年人件費が上昇しており、これまでのように低コストで商品製造ができるようなメリットが少なくなっているという。また、現地での人材の確保なども困難ということから、海外で生産拠点を敢えて構える必要性が薄いという点も見逃せない理由だろう。それならまだ日本国内で生産拠点を置いたほうがメリットが大きいというわけだ。

 もちろんすべての起業が海外から国内回帰になっているというわけではない。中国などの海外の国々はまだ成長できる可能性を持っていることから海外志向の企業というものはまだまだ多く存在する。海外から国内への移行については「撤退」として行っている企業があるものの、こうした動きが本格化するのはまだこれからだろう。

 こうした国内回帰の動きを歓迎する意見もある。生産拠点が海外から国内に移ったことによって、雇用拡大が見込めるからだ。厚生労働省の調べによると、今年1月~8月にかけての製造業の雇用は7年ぶりに1000万人を創出したとされており、景気回復・経済の活性化という点で大いに期待されている。そのため、今後も海外から国内への生産拠点の移行については各方面からも注目されているという。

 少子高齢化が進む現代日本では、国内にメーカーの生産拠点ができたからといってすぐに人材が確保できるとは限らないものの、国内回帰の動きは社会全体で見ても悪いことではないはず。「撤退」と書くと少し後ろ向きなイメージがあるものの、ここはそれぞれの経営者の英断を見守りたい。(編集担当:久保田雄城)