事業収益が悪化する背景には様々なものがあり、それを理由として構造改革に着手するというケースも多い。これは、大手都市銀行についても決して例外というわけではなく、多くの銀行でコスト見直しなどの構造改革案が浮上している。銀行といえばただ単に預貯金をする場所、というだけでなく融資など様々な事業を手がけており、それらの事業における収益の悪化が経営を圧迫しているという状態は他の企業と何ら変わることはない。
銀行の構造改革の中でも目を引くのが三菱UFJフィナンシャルグループ<8306>のコスト削減案である。都市銀行の中でも最大手といわれる三菱UFJフィナンシャルグループ<8411>は、三菱東京UFJ銀行の店舗削減を検討している。三菱東京UFJ銀行では現在およそ480店舗を展開しているが、これらの店舗を統廃合し、最終的には2割程度削減すると発表した。現在でもネットバンキングの利用が増加し、実際に店舗まで足を運ぶ人が減少していることから店舗を統廃合しても特に影響はないとの見通しである。店舗の数を減らすことができればそれだけでも運営コストを抑えることができるようになるうえ、残った店舗についても窓口業務をデジタル化した「無人化店舗」にする計画もある。こうした業務の大幅な見直しを今後本格的に進めていくという。
都市銀行の大手のひとつである、みずほフィナンシャルグループ<8411>も構造改革案を9月の中間決算に合わせて公表した。それによると、現在グループ全体の従業員のうちおよそ3割の人員を10年以内に削減するという。希望退職などのいわゆる「リストラ」ではなく、新規採用を抑えることで人員調整を図り、それとともに店舗の統廃合や最適化も進める予定だ。現在みずほ銀行ではそれぞれの支店ごとに個人や法人向けのサービスを行っているが、支店や地域によってはそれらの事業を提携する地方銀行に任せ、店舗業務のスリム化を目指す考えである。IT技術の進歩に伴い、実店舗を構える意味合いや目的も大きく変わっており、これらの技術を活用したコスト削減に取り組む。
こうした大手都市銀行がコスト削減に取り組んでいる背景にあるのは、ひとつは冒頭で述べたような事業収益の悪化にある。人口の減少やマイナス金利など、銀行の収益が悪化する要因には様々なものがある。また、利用者のライフスタイルも大きく様変わりしており、従来に比べローン商品などは縮小傾向にある。これらの事情をふまえ、今後急激に収益が向上する可能性は低いことからコスト削減へと舵取りをしたと考えることができる。(編集担当:久保田雄城)