17日、日本生産性本部は「日本の労働生産性の動向 2017年版」を公表。2016年度の時間当たりの名目労働生産性は4828円で過去最高を更新。一人当たり名目労働生産性は830万円で上昇傾向を維持するも伸び率は減速傾向。
日本生産性本部は17日、「日本の労働生産性の動向 2017年版」を公表した。2016年度の1人当たり名目労働生産性は830万円、時間当たりの名目労働生産性は4828円と1人当たりおよび時間当たりともに過去最高額を更新した。日本の労働生産性はリーマンショック時に大きく低下した後、2011年以降、緩やかながら回復傾向が持続している。労働生産性とはGDPを就業者数あるいは就業時間で除したものだが、2016年12月にGDP推計の計算基準であるSNA(国民経済計算)の基準改定が行われ、GDPは過去に遡って30兆円程度増加しており、時系列上の比較においては、この点を留意する必要がある。
物価上昇率を除いた実質ベースでの就業者1人当たり労働生産性の上昇率はプラスの0.3%であった。時系列を見ると12年度に0.9%、13年度に1.8%、14年度にマイナス1.1%、15年度に0.8%となっており上昇率に減速傾向がみられる。時間当たりの実質労働生産性上昇率は16年度に1.1%で、12年度は1.2%、13年度は2.0%、14年度がマイナス0.9%、15年度1.3%とやはり減速傾向がみられる。中長期の平均を見ると就業者1人当たりベースの平均上昇率は00年年度から05年度で1.5%、リーマンショック時を含む05年度から10年度が0.2%、10年度から16年度が0.5%となっている。時間当たりベースの上昇率は00年度から05年度が1.9%、05年度から10年度が0.8%、10年度から16年度が0.8%と1人当たりベースおよび時間当たりベースともにリーマンショック以前の水準には回復していない。
これまでは就業者の増加が見込めないため経済成長は労働生産性の向上を主要因としていたが、近年ではこうした傾向に変化が見られ、16年度では経済成長率1.3%のうち就業者の増加の寄与度は1.0%となり、労働生産性の上昇より就業者の増加がGDPを押し上げる主要因になっている。就業者数は増加傾向にあるものの労働時間は15年度に0.8%減少と近年減少傾向にある。これは労働時間の短いパートタイム労働者の比率が上昇した影響が大きいとともに正社員の労働時間も減少傾向に転じているためである。こうした労働時間短縮の動向の中で16年度の名目時間労働生産性は4828円で前年比0.9%の増加と小幅ながら堅調に推移している。
報告書では「『働き方改革』が今後も上手く進むかは、時間当たり労働生産性が好調に推移している現在のトレンドを今後も続けられるかどうかが大きな影響を及ぼすことになる」と結論づけている。
なお、日本の労働生産性は、2015年にOECD加盟35カ国中18位で加盟国の平均を下回っており、人口減少社会の中で日本の労働生産性の向上は急務であると言える。(編集担当:久保田雄城)