日経平均株価が上昇し、多くの企業の業績についても好調な状態が続いている。そんな中、希望・早期退職者が増加しているとのデータもある。このデータは東京商工リサーチの調査によるもので、2017年に希望・早期退職者の募集を実施した企業が5年ぶりに前年を超えたというもの。これまで、希望・早期退職者を募集する場合というのは業績が悪化し人件費を削減することを主な目的とする場合が一般的だった。しかし、業績は決して悪くない、むしろ好調な状態が続いているにもかかわらず早期退職者を募集するところも少なくない。
そもそも希望・早期退職者を募集するというのは一種の「リストラ」である。業績が悪化することで人件費を減らし、企業としての体力を温存することが主な目的だ。しかし、現状では景気が拡大していることもあり、業績不振とは言い難い部分もある。にもかかわらず、希望・早期退職者を募集する背景にあるのは、やはり企業ごとの事情が大きい。多くの経営者は、現在の好景気というものが永続的に続くという楽観的な見通しというものを立てることはなく、今後ふたたび景気が悪化する可能性を考える。実際にそういう経験をしてきたからだ。そのため、景気が好調な時期に将来の新たなビジネス戦略を立てることで、再び訪れるであろう景気の悪化に備えたい、と考えるケースが多い。希望・早期退職者の募集についてもこうした経営判断が大きく関係しているといえるだろう。
また、企業側の希望・早期退職者の募集に応じる労働者側にも景気拡大ならではの事情がある。現在では「売り手市場」といわれるほど、どの企業でも人材不足の状態が続いている。早期退職をしたとしても、また別の企業に転職しやすい環境となっているため、企業としても早期退職者の募集がしやすくなっているのだ。早期退職といえばこれまではやや耳触りの良い言葉ではなかったかもしれないが、景気が拡大している現在では、これまでとは少し違った意味合いの言葉になるといった可能性もある。
ただし、希望・早期退職者を募集する企業のすべてが業績好調というわけではない。中には業績不振から人件費削減といったこれまで通りの理由で早期退職者を募集するケースもある。景気拡大しているからといってすべての企業の業績が好転しているのではないことを考えると、それぞれの企業ごとに将来を見据えて経営方針を見直す時期に来ているのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)