都市部では現在ホテルの開業ラッシュが続いている。日本を訪れる外国人観光客、いわゆるインバウンドの増加による需要が高まり、それを受けてのホテル開業ラッシュだ。外国から訪れる観光客は2020年の東京オリンピックを見据え増加傾向にある。ホテルを開発する側はこの機会をビジネスチャンスととらえているという点もこのホテル増加に関係しているといえるだろう。
外国から訪れる観光客は、東京や大阪などの都市部を中心に多く滞在する。ホテル開発計画が都市部に集中しているのもその理由からである。ホテルの開発は主に2020年の東京オリンピックにあわせて開業することをひとつの目処としている場合が多い。大阪の場合で考えると、ホテルの計画が集中しているのは淀屋橋や本町周辺のいわゆる「オフィス街」である。このあたりのエリアにおける大きな特徴、それはミナミなどの繁華街に足を伸ばしやすいという点にある。繁華街の中心部にホテルを開業するよりは土地代なども安く、それでいて一定のニーズも見込めるという点が大きなポイントとなっている。
ホテル開業のラッシュは東京も同じである。多くの外国人観光客が訪れる東京の銀座では外資系のホテル進出が相次いでいる。米ホテル大手のマリオット・インターナショナルが高級ホテルの開業を進めている他、米スターウッドホテル&リゾートも銀座でのホテル開発の事業を進めている。いずれもターゲットは海外から日本を訪れる観光客だが、銀座というエリアに開業する目的はその土地のブランド力を高めることにあるという。それがひいては日本そのものの価値を高めることにつながるというのが開発側のテーマとなっている。
このように、ホテル開業ラッシュに湧く都市部だが、全く懸念材料がないというわけではない。たとえばここまでホテルの開業が集中すれば当然ながら懸念の声としてあがってくるのが「供給過剰」のよる問題である。需要に対して供給が増えてくれば価格競争が高じて必要なサービスの提供が受けられない可能性が高くなる。
また、民泊やカプセルホテルなどといった割安の宿泊施設への影響も少なくない。これらの宿泊施設の特徴は、通常のホテルに比べて割安で宿泊できるという点にあるが、こうした施設が人気だったのはホテル不足という背景もある。ホテルの開業が続けば民泊やカプセルホテルなどといった宿泊施設は高級ホテルと競合することとなる。結果的に宿泊客を取り合うといった形になる可能性もあり、ホテルの健全な運営の支障につながるのではないかとの見方も強い。(編集担当:久保田雄城)