ヒューマンタッチ総研が建設技術者不足問題についての独自試算を行った。建設技術者は今後10年間で6.7万人減少、2025年時点で11万人超が不足。ICT導入などの対応で5.5万人分の需給ギャップを改善することが可能と指摘。
建設業の人手不足が深刻化している。2017年10月時点で建設躯体工事の職業の新規求人倍率は9.89倍にもなっている。高度成長から50年、平成バブルから30年を経て社会資本は老朽化し修繕の必要性にせまられている。これに加え震災復興やオリンピックによる需要増も人手不足に拍車をかけている。インバウンド需要に応えるためにも今後、再開発事業は必須である。この人手不足の根本原因が少子高齢化という人口構造にあることは今さら指摘するまでもない。
ヒューマンタッチ総研は先月27日、建設技術者不足問題について25年に向けて独自の推計を行い、その分析結果を公表した。推計は「現状維持シナリオ」と「生産性向上シナリオ」の2つの想定によって行われた。
「現状維持シナリオ」では、建設技術者数は15年の31万人から25年には24万3035人へと6万6965人減少すると推計されている。一方、厚生労働省の「一般職業紹介状況」から割り出した25年時点での必要な建設技術者数は35万6785人と推計された。結果、差し引き11万3750人の人手不足が発生することになる。
建設技術者の増減要因の内訳を見ると、減少要因で最も影響が大きいのは定年による退職であり、15年時点で3割を占める55歳以上の就業者9万7千人が25年には65歳となり労働市場から退出すると見込まれる。これに「他産業への転職」2万8千人の減少を考慮すると、増加要因である「他産業からの入職」3万6千人や「新卒採用」2万2千人だけではカバーしきれないことになる。
「生産性向上シナリオ」では国土交通省が提言している「i-Construction」に沿って全ての建設生産プロセスでICTが活用され「25年度までに建設現場の生産性が20%向上」するという想定で試算が行われる。このシナリオでは、建設需要に対応するために必要な建設技術者数は7万1539人減少すると推計される。さらに働き方改革で労働時間が減り、新たに1万6266人の雇用が必要になる。合計すると25年に必要とされる人員は30万1510人まで圧縮される。25年の建設技術者の推計値24万3035人との差は5万8475人まで縮小し、「現状維持シナリオ」より5万5275人分改善するという試算になる。
すでに建設業界では人手不足感がピークに達している。この不足感の主要な原因が少子高齢という人口問題にある以上、このままでは今後不足感はさらに深刻化して行くのは必然である。ICT化による生産性の向上が急務である。(編集担当:久保田雄城)