政府は大学の研究・教育の自主決定権遵守を

2018年02月11日 14:21

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安倍政権は「愛国心」教育に幼保から取り組ませる傾向を強めているが、今回の大学改革に紛れて「国旗掲揚・国歌斉唱」を求めるような内容を含んではならない

 安倍政権下で「人づくり」を理由に大学への政治介入が懸念されている。今月8日の「人生100年時代構想会議」で安倍晋三総理は私立大学にまで機能・役割の明確化など大学改革への意欲を露わにし「時代にあった形に大学改革を進めなければならない」と大学改革に意欲をみせた。

 全国に800近い大学が存在し、少子化で私大の4割が定員割れという事態が生じ、大学生の質の低下も大学乱立の中で深刻化している。しかし、少子化の中で大学も「自然淘汰される時代」に入っている。

 生き残る術は各々の大学が自ら、魅力ある学び舎に育て上げる努力をすべきで、過剰な私大への関与はすべきでない。

 そもそも大学は最高学府として自主独立した自由な研究・教育機関である。特に私学はそれぞれが「建学の精神」を有し、これをもとに人材育成に努めているはず。

 憲法23条が保障する『学問の自由』には『大学の自治』も含まれる。大学の教授・研究者の人事、大学施設の管理はもちろん『研究・教育する内容やその方法についても、大学に自主決定権がある』。

 安倍政権下での大学改革がどのような内容になるのか、今後の議論の流れで、方針が出されるのを見守る必要があるが、産業界(実業界)が求める人材養成所(職業教育)のような、産学連携強化での実学指向大学が増えれば、人文社会科学系分野の研究や教育に大きな影響が出てくるのではないか、と懸念される。

 8日の会議では大学経営に民間の外部人材を理事に登用することを進める方策を検討すべき、大学に対する望ましい自治体の関与の在り方について検討すべきなどの意見も出た。慎重な議論を望みたい。

 一方で、数年前から国立大学に対し「税金によって賄われている」などを根拠にして、入学式や卒業式に「国旗掲揚・国歌斉唱」の要請を文科大臣が行うなど、本来、大学の自治に任せるべきことが財政誘導で、半ば強制になりかねない傾向を強めている。
 
 大学によっては、君が代斉唱はもちろん、国旗掲揚にも応じていないところがあるが、入学式や卒業式に君が代斉唱を強制しているところもある。どのような対応をしているとしても、大学が判断するもので、文科省が要請したり、財政誘導で強制したりすべきものではない。「大学の自治」に任せるべきものだ。

 安倍政権は「愛国心」教育に幼保から取り組ませる傾向を強めているが、今回の大学改革に紛れて「国旗掲揚・国歌斉唱」を求めるような内容を含んではならない。私学、国立、公立を含め、大学における『学問の自由』を侵害することのないよう、十分に留意して大学改革は慎重に検討していくべき性質のものだ。(編集担当:森高龍二)