歴史・公民・公共・地理・道徳は2冊併用教育を

2018年02月04日 14:34

画・疲弊する教育現場 教師の過酷な勤務実態とは

授業や教科書を編集する際の指針となり、法的拘束力を持つ学習指導要領で、高校の新学習指導要領案が今月にも公表される見通し

 授業や教科書を編集する際の指針となり、法的拘束力を持つ学習指導要領で、高校の新学習指導要領案が今月にも公表される見通し。公表後は意見公募が行われる。

 子どもたちがどのような「教科書」で、特に「歴史」や「領土」「憲法」などについて学ぶことになるのか、新学習指導要領案の中身を検証し、国際的にもバランス感覚を備えた、公平な判断力を育成できる内容になっているのか、多くの国民が新学習指導要領案に目を通し、意見を提起することを期待したい。

 新学習指導要領案がどのようなものになるか、マスコミの伝えるところでは「安全保障、領土問題など、現実の諸課題をテーマに主権者教育の充実を図る必修科目『公共』の新設。歴史総合、地理総合など27科目の新設・改定がある」という。

 特に社会科系の科目では「我が国領土など国土に関する指導の充実」が新学習指導要領案のポイントとも伝える。さらに、高校においても道徳教育推進教師を配置し、道徳教育を展開する考えのようだ。

 安倍政権下で「君が代」教育や「道徳教育」「愛国心教育」が強化されてきた。さらに領土教育や歴史教育がどのように規定されていくのか。保守系の産経新聞は次期学習指導要領案について1月28日付け1面トップ見出しに「歴史教育、偏向是正へ規定」と報じた。

 リード文で「近現代分野で偏向的な書きぶりが問題視されてきた高校歴史教科書の改善に向けた一歩にもなる」としていることでも分かるように、安倍政権の狙いの一環がうかがえる。

 筆者はフジサンケイグループの育鵬社の中学教科書「新編、新しいみんなの公民」を見せて頂いたが、「わたしたちと国際社会の課題」(領土を取り戻す、守るということ)では北方領土、竹島について、それぞれ、ロシア・韓国が「不法占拠」している。

 尖閣諸島は日本が実効支配しているので「政府は解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない、との立場」と紹介し、北方領土の領土問題を知るための独法・北方領土問題対策協会のHPアドレスと竹島問題を知るための島根県Web竹島問題研究所アドレスを紹介している。

 領土問題では相手国の主張もネットで閲覧できるので、そこも閲覧し、自身がより深く理解する材料を増やしていくべきだろう。正しい理解を深めるには客観的な資料により積み重ねていくほかない。

 慰安婦問題や南京虐殺などでも教科書により扱いに微妙な違いが生じる。教科書によっては南京事件に関して笠原十九司(体験者27人が語る南京事件)の一部を紹介し「国際法に反して大量の捕虜を殺害。老人・女性・子どもを含む市民を暴行・殺害しました」(中学社会・歴史的分野、学び舎『ともに学ぶ人間の歴史』)と記しているところもある。

 南京事件体験者部分では、当時、南京市で住んでいた8歳の女性(実名入り)の証言を入れ「昼近くに日本兵が家に侵入してきました。父は撃たれ、母と乳飲み児だった妹も殺されました。祖父と祖母はピストルで、15歳と13歳だった姉は暴行されて殺されました。私と4歳の妹は泣き叫びました。銃剣で3か所刺され、気を失いました。気が付いたとき、妹は母を呼びながら泣いていました」と残虐行為が描かれていた。

 歴史教育にとって、こうした事実も知っておくべき重要な情報に違いない。こうしたことを知ることは平和国家を築くうえで、忘れてはならないことと考える。

 保守主義者からは自虐史観との声が出そうだが、だからこそ、歴史教科書や公民・公共、地理、あわせて道徳といった教科に関しては、複数の教科書で記述や表現がどのように違うのか、それはなぜかを考え、複眼的な目と客観的に物事を見る目を育てるとともに、思考力や判断力を高めてもらう必要がある。高校に留まらず、中学においても同様のことがいえる。文科省にはこうした取り組みを期待したい。(編集担当:森高龍二)