都市ガス自由化も伸び悩む新規参入

2018年04月11日 05:51

画・都市ガス自由化も伸び悩む新規参入

家庭用都市ガス販売の自由化に際して、新規参入が伸び悩んでいる。電力自由化が多くの新規参入があった場合と対照的なこの状況に、経済産業省も対策に乗り出した。

 新電力と呼ばれる電力自由化と同様に自由化が始まったのが家庭向け都市ガス販売の自由化である。2018年4月で都市ガス自由化から1年が経過したものの、新規参入業者の数は伸び悩んでいるのが現状だ。電力自由化と異なり都市ガスの新規参入業者が少ないのはどういう理由があるのだろうか。

 全国でスタートした家庭向け都市ガスの販売自由化だが、新規参入が難しい背景にあるのが、都市ガスの導管が地域ごとに分断されているという点である。電気の場合はガスと異なり全国的に卸売ができるものの、ガスの場合は地域ごとに分かれていることから全国一律の卸ができない。さらに、事業者は原料となる天然ガスの調達が必須であるとともに、そのガスの受入や保管に必要な拠点の整備も必要となる。さらに、これらの拠点の整備に加えて家庭用に販売したガス給湯器などの保守も欠かせない。実際の運用にはこれらの拠点を管理運営するための設備投資などを含め相当なコストがかかることになるため、新たにガス販売に新規参入することはかなり難しい。こうした要因がガス販売の自由化の新規参入が伸び悩む理由となっている。

 現在、都市ガスの切り替えについてはおよそ75万件となっており、そのうち約半数が関西に集中している。ただし、既存業者から新規参入した業者への切り替え件数は関西をはじめ関東や九州などでも切り替えが進んでいるが、北海道や東北、四国の都市ガスの切り替え件数は現在のところゼロという状態である。このことから、都市ガスの販売自由化における新規参入が難しいことが大きく影響していることがわかる。そこで、経済産業省ではガスの相互販売の実績を増やしたり、ガスの供給施設の整備の利便性を高めることで新規参入するための環境整備を行うこととなった。

 電力自由化もそうだが、都市ガスの販売自由化は、これまで独占販売のような状態が続いていたガス業界に競争の原理を持ち込んだことで市場の活性化を促すことが目的だった。しかし、それも新規参入の業者の数が増えなければ市場の活性化にもつながらない。新規参入が難しい要因には様々なものがあるものの、これらの課題を少しずつクリアしていくことがガス業界の市場活性化につながるために欠かせないポイントとなっていく。新規参入を増やすための仕組みづくりはまだ始まったばかりだ。(編集担当:久保田雄城)