電力自由化に伴い、従来までの電力会社から別の新電力に契約を切り替えたという人は少なくない。中には住居がマンションやアパートなどの賃貸物件のため電気の契約について切り替えることができないという人もいるかもしれないが、新電力への切り替えについては増加傾向にある。そんな電力自由化のシェアについて、調査会社の富士経済ではこれまでの電力自由化における実績を集計・分析した。その結果、今後10年以内に新電力のシェアが20%を超えるのではないかという予測を発表した。
2016年4月に電力の小売が自由化されたことを皮切りに新規参入してきた、いわゆる新電力と呼ばれる業者については17年5月の時点でシェア率はおよそ10%に拡大している。この新電力のシェア拡大については今後もさらに伸びていくとみられており、今回の富士経済の試算についてもかなり現実的な数値ではないといえるだろう。電力自由化が行われる目的としては、電気料金を緩和させることにあるが、ここまでシェアが拡大しているということはそれだけ多くの人が現状の電気料金について少しでもコストを削減したいというニーズがあるということになる。
また、電力自由化に伴う新規参入は電力というものに対して競争の原理を持ち込んだという背景もある。電気というものは多分に専門的な技術を必要とするものであり、それと共に日常生活で不可欠なものだが、それだけにこれまで電気を扱ったことがないような業者に委ねて良いのかどうかは多くの人が不安に感じることだった。競争の原理が持ち込まれることによって、電気料金の低下とともに電気そのものの質についても一定のクオリティが保たれるようになった。電気という「商品」については高かろう安かろうという料金面だけで選ぶものではなく、どれだけ安定して利用することができるかどうかが重要となるものであり、新電力のシェアが拡大しているのもこうした面についての一定の担保がなされていると考えることができる。
このように、新電力のシェアについては今後も順調に拡大していくとみられているがそのカギとなるのが少子高齢化である。人口が減少しても介護などで電力の消費そのものは減ることはない。そのため、低コストで安定した電力供給を受けるためにはそれが可能な新電力が最適な選択肢ということになる。もちろんエネルギーの安定供給については国家全体の取り組みも必要となってくるため、電力会社だけの問題ではないが、国民からの期待が高いという点に変わりはないだろう。(編集担当:久保田雄城)