企業や家庭などで自由に電力会社を選ぶことができる電力自由化など、電気を取り巻く業界が今注目を集めているが、そんな中2017年4月にスタートしたのが「ネガワット取引」である。ネガワットとは、企業や家庭が節電することによって生み出される電力のことであり、アメリカでは1980年代に既に登場した概念である。ネガワットは使われることなく節約された電力のことであることから、ある意味「発電」と同じということで価値があるものと考えることができる。日本においては東日本大震災をきっかけに電力の安定供給と需要とのバランスについて考える機会が増えたことから、ネガワットについての議論も活性化し、その結果ネガワット取引のスタートにつながった。
このネガワット取引の特徴は、企業や家庭が電力を節約した場合に報酬が支払われる、という点にある。通常、企業や家庭が電気を使用する場合には電力会社と契約することになるが、ネガワット取引の場合は企業や家庭と電力会社との間に「アグリゲーター」という仲介業者が入る。アグリゲーターは、電力会社からの節電要請を受けて、実際に電気を使用する企業や家庭に対してそれを指示する。実際にはここまでシンプルな仕組みではないものの、大まかにいえばネガワット取引はこうした仕組みのもと行われる。
節電は日本政府の掲げるエネルギー政策の根幹を担うもののひとつだが、今年度から電力会社の送配電部門が電力の需要と供給のバランスを調整することを目的としてネガワットを調整している。もちろん時期的に節電できるタイミングとそうでないタイミングとがあるが、このネガワットが活用できれば節電にも大きな効果が期待できる。そして、もうひとつはこのネガワット取引をビジネスチャンスとみる企業の参入も大きなポイントとなるだろう。
このネガワット取引においてビジネスチャンスとなるのは先述のアグリゲーターである。顧客と電力会社との間に入って節電の調整を行う契約を結ぶことで、新たなビジネスを作り出す可能性が生まれる。また、このアグリゲーターの顧客となる企業にとっても、節電によってネガワットが作られれば電気代を節約することができコスト削減につながるうえ、ネガワット取引で報酬を得ることができる。つまり、各方面にとってメリットが広がっていく仕組みということになる。こうした取り組みを活用すれば新たなビジネスへとつながっていく可能性があるといえるだろう。(編集担当:久保田雄城)