電力自由化に伴い、従来の電力会社から新規参入したいわゆる新電力に契約を乗り換えたという人は少なくない。電力自由化によって、これまで電気というものとは直接関わりの少なかった業者もビジネスチャンスを見込んで参入したところも多いものの、この新規参入については必ずしも吉と出たところばかりというわけでもない。というのは、新規参入した業者のすべてがビジネスチャンスを活用できたとは限らないからだ。
2018年4月には、電力自由化がスタートして3年目になる。実はこの3年目というのは、電力自由化にとってはある重要な意味を持つ。というのは、電力自由化で新規参入した新電力では、2年契約の更新時期だからだ。2016年の電力自由化開始時には、一部の電力会社が顧客流出を防ぐことを目的として2年契約を設定した。2年契約の更新時期にはそのまま継続して現在の電力会社を利用する人もいるかもしれないが、別の業者に切り替えるという人も相当数存在する可能性が高く、この時期には他の電力会社にとって顧客を獲得するチャンスにもつながる。
しかし、新電力と呼ばれる業者の中には顧客争奪戦になった場合に対抗しきれない業者も少なくない。新規に顧客を獲得するためには、顧客にとって何らかのメリットがなければならない。たとえば現在利用している電力会社よりも安い料金プランの提供などはその最も基本的な内容といえるかもしれないが、そのためには収益性についてもある程度は見越しておく必要がある。特に新電力の中には自社で発電設備を持たないところも多く、こうしたところの場合は設備投資だけでコストを圧迫することになり、価格競争になった場合には事実上勝つことは難しくなる。新たな顧客を獲得できなければそれだけ収益性の悪化にもつながり、サービスの維持もままならない。電力自由化によって新規参入してきた業者が増えたものの、その中には収益性の悪化から電力事業から撤退したところも多い。
そして、電力自由化から3年めの2018年には、こうした新電力の淘汰がさらに進むのではないかとみられている。新規に顧客を獲得するためには新たなビジネスモデルやサービスを展開することが不可欠だが、それに耐えられるだけの体力が企業になければ撤退するしかない。電力自由化は、これまで電力会社しか扱うことができなかった「電力」という商品について市場競争の原理を持ち込んだ新たなビジネスモデルが展開された。実際に電力を利用する顧客にとっては少しでも安く電力を利用できるようになることから、好意的に受け止めているケースも多い。電力自由化から3年めを迎える2018年には、業界ではこれまでにない変化が起こる可能性が高いといえるだろう。(編集担当:久保田雄城)