日産自動車が4月下旬になって2022年までの国内市場における中期計画「Nissan M.O.V.E to 2022」を発表した。一方で、ルノー・日産アライアンスの大株主でもある仏政府は6月に開催するルノー社の株主総会に向けてゴーン氏を会長兼最高経営責任者(CEO)として留任・続投させことをすでに3月に発表している。その条件として、日産とルノーを後戻りできない“不可逆的な”関係、つまり合併などの関係に改めるよう求めているとされる。
ルノーの最大株主である仏政府は、ルノーと日産の経営統合を求めており、ゴーン氏は現在の相互出資関係を改めることを求めたとされているのだ。
4月20日に日産が発表した「中期計画」によれば、大きく3つの方策が打ち出された。
「2022年度までに国内新車販売に新型電気自動車3車種とe-POWER搭載車5車種を投入すること」、「国内市場を“ニッサン インテリジェント モビリティ”技術の進化をリードする主力市場とすること」、そして「国内市場を“ニッサン インテリジェント モビリティ”の技術の進化をリードする市場と位置づける」こととしていたのである。
このなかで最重要課題と思われる電動化推進について同社は、国内市場において2022年までに電動化を積極的に拡大させる。2022年度末までに、既出したとおり、新しい電気自動車3車種と新規にe-POWER搭載車5車種を国内市場に投入。これにより、2022年度までに国内の販売台数に占める電動駆動車の販売が40%になると見込んでおり、2025年度までには日産の国内販売台数の2台に1台以上が電動駆動車になる見通しだ。
車両の電動化を加速させてCO2排出量削減をリードするだけでなく、「ニッサン インテリジェント モビリティ」が目指す「ゼロ・エミッション」と「ゼロ・フェイタリティ」の社会を実現するという。ただ、国内でのグロスの販売目標や売上高など、詳細な発表はない。
しかも、今回の発表のなかで、ルノーとの資本関係や電動車両の共同開発、三菱自との関係などについて一切触れられていない。
ましてや、EVの販売シェアを拡大するに当たって、その動力エネルギーとなる電力の生産・供給や社会インフラへの投資などについて、更にいうなら政治・行政へのコミットメントについては、いかなる言及も無かった。現在、日産の世界販売に占める日本国内販売は2017年現在、台数ベースで9.2%でしかない。これは三菱自に次ぐ下から2番目のシェアでしか無い。「日産は日本市場を無視した経営を行なっている」との消費者の声も、あながち間違いとはいえない。
また問題点は多い。現在、日本の自動車保有台数は約8000万台である。この半分の4000万台がEVにシフトしたとしよう。保有するクルマが年間5000km走行とした場合、1年で約20回の充電が発生する。ざっと平均すると、1時間で9万台が充電している計算だ。これは平均で270万kWの電力がEVの充電で消費されることになる。土日や行楽シーズンならば、さらに上回って1000万kWに達してもおかしくない。そして、この電力需要の多くは首都圏や関西圏の都会で発生する。
そのため、EVの普及は既存の発電所では対応できない可能性がある。原子力発電所が再稼働したとしても、平均的な原発1基の出力は100万kW。例えば、関東で200万KWhの充電が発生すると、原子力発電所2基に相当する。この問題について日産はEV普及だけ示しただけで、日産は電力供給について無視を決め込んだ。
逆に日産は、中期計画「Nissan M.O.V.E to 2022」において、グローバルで2022年の最終年度までに、現在の倍に相当する8%の営業利益率を上げながら、年間売上高を12兆8,000億円から16兆5,000億円へ増加させることを目指す。
「ニッサン インテリジェント モビリティ」への投資を行いながら、日本、中国、米国、メキシコにおいて安定した収益成長の実現に取り組む。また、ブラジル、ロシア、インド、アルゼンチン、およびインフィニティ、ダットサンブランドに行なってきた投資成果の刈取りを進め、欧州、中東、アセアンにおいては、各ブランドが持つポテンシャルの最大化を図る。また、本計画の最終年度までに、年間100万台の電動駆動車(e-POWER搭載車およびEV)を販売し、電動化、自動運転、モビリティサービスにおけるリーダーを目指す、と宣言した。
この無謀、野心的ともいえる膨大な目標達成が、社会インフラや行政との協働・協力なしに“EV一直線”で達成できるのだろうか。(編集担当:吉田恒)