長期的なアルコール飲料漸減のなか、旺盛なウイスキー需要に応えるアサヒ

2018年05月20日 16:24

Single_Malt

アサヒビールが旺盛なウイスキー需要に対応して新たに導入するシングルモルト、左から「グレングラッサ・リバイバル」「エボリューション」「トルファ」の3種。「ベンリアック」の2種、そして「グレンドロナック」3種

 国内のアルコール消費が低減するなかで、ウイスキーの需要だけは伸びている。国際的なアルコール飲料消費の状況をまとめた英国のアルコール飲料調査会社「IWSR」によると、2016年暦年でウイスキーの世界市場で5大ウイスキー(スコットラント、アイルランド、アメリカ。カナダ、日本)の伸び率は102.0%だったという。

 日本国内消費だけにフォーカスすると、2015年に出荷1万5684ケースだった実績を2016年には大きく上回り1万7095ケース、前年比109.0%を達成している。内訳は、国産ウイスキーのシェアが81.1%、輸入ウイスキーが18.9%となっている。その輸入品の過半数、51.7%を占めるのが、輸入ウイスキーの中でも高価でプレミアムウイスキーとされるスコッチウイスキーだ。

 サントリー「山崎」やニッカウヰスキー「余市」などの国産プレミアムウイスキーの在庫不足が販売の足枷となっている国産ウイスキーを尻目に、スコッチウイスキーは、ここ数年、消費者に大いに受け容れられ、2016年には2012年実績比で154.5%の伸びを見せ、2015年実績比でも118.6%と大きく伸長している。

 なかでも2000年以降、ウイスキーのコアなファンが着目したスコッチのなかでも高価な“シングルモルト・ウイスキー”が売上高で伸長する。先のIWSRによれば、日本におけるシングルモルトは、2016年に2012年比で136.1%。それも、普通のブレンデッドスコッチ12年なら1500円?2500円(700ml/瓶)ほどだが、シングルモルトなら1本5000円程度、高価な限定品などでは数万円に達する。金額ベースで、これほど“美味しい市場”を見逃す手はない。

 そこでアサヒビールは、新たに3ブランド8種のシングルモルト・ウイスキーを発売する。導入するブランドは、ブラウン・フォーマン社が製造する「グレンドロナック」「ベンリアック」「グレングラッサ」で、6月19日から全国発売となる。

 ハイランドモルトの「グレンドロナック」は、ベーシックな「12年」、プレミアムな「18年」「21年」の3種のラインアップで、参考価格はそれぞれ税別5770円、1万3080円、1万7470円だ。すべてシェリー樽熟成のモルトウイスキーで、ターゲットはマッカランやグレンモーレンジ愛飲家と思われる。

 スペイサイドモルトの「ベンリアック」は2種のラインアップ。ベーシックな「10年」は5190円。スペイサイドモルトとしては独特なヘビーピートモルトの「キュオリアシタス10年」は5330円で、独特なピート香はラフロイグやアードベッグなどのアイラモルトを彷彿させる。

 スペイサイドの「グレングラッサ蒸溜所」は1986年に一度生産をストップしたが、2008年に復活した蒸溜所。今回導入するラインアップは、「リバイバル」「エボリューション」「トルファ」の3種で、いずれも生産量が少ないため、日本国内では料飲店向けの販売となる。後者2種はアルコール度数50%のマニアックなモルトウイスキーとなっている。「エボリューション」は、テネシーウイスキーとして有名なジャックダニエルの樽で熟成した少量生産モルト。「トルファ」は、ブランド初となるヘビーピートモルトで、バーボン樽熟成だ。

 アサヒビールは拡大する国内ウイスキー市場に向けたポートフォリオの拡充で需要に応える。(編集担当:吉田恒)