IRの背景に米国カジノ王とトランプ大統領?

2018年07月17日 06:18

 大手マスコミ調査(朝日新聞)で内閣支持層でも64%が今国会でIR法案の成立に「必要ない」と結果がでる中、政府・自民・公明は今国会の成立を強引に行う構え。

 政府が急ぐ背景に何があるのか。今月12日の参院内閣委員会で山本太郎議員(自由党共同代表)は「何が何でもカジノを自民党・公明党は成立させる気で、本委員会審議も委員長の職権でたてられてしまった。(西日本豪雨での)被災地域より(ラスベガスのカジノ王と呼ばれる)アデルソンやトランプなどへの貢ぎ物」と民間賭博を認めることになるIR法案(カジノ解禁)が米国からの要請をにおわせた。

 カジノ法案を巡っては日本共産党の山下芳生副委員長が15日のNHK日曜討論で「立法事実にも疑義が生じている」と指摘した。

 山下副委員長は「カジノ関係業者から自民党議員ら(自民党の萩生田光一幹事長代行ら国会議員15人)がパーティー券を購入してもらっていた。西村康稔官房副長官ら券を購入してもらっていた議員はカジノ法案のもとになったカジノ推進法の提案者だ」と述べ「西村氏らには参考人として国会に来ていただく必要があるのではないか」と国民の新たな疑念に答える必要を提起した。

 加えて、ギャンブル依存症対策でのカジノ施設への入場規制にも利用者保護からの欠陥が鮮明になっている。

 希望の党の松沢成文参議院議員団代表は「依存症対策で入場、週3回までと制限しても、(24時間以内であれば12時間で出て、また入っても12時間以内なら『1回』のカウントになる)こういうカウントでは週に6日行けることになる」と指摘。

 この欠陥については立憲民主党の小川敏夫議員も12日の参院予算委員会で「7日のうち(施設入場は)3回としているが、1回というのは延べ24時間で1回とカウントする。月曜夕方6時に施設に入り、夜帰宅して、火曜朝に入り、午後6時までに施設を出れば1回としかカウントされない」と指摘し、石井啓一国土交通大臣は「延べ24時間で1回とカウントすると承知している」と小川議員の指摘を認めた。

 政府規制では事実上、28日間に20日、7日間に6日の入場が可能になり、年間通して、休日の度にカジノに行けるザル状態。加えて規制根拠に医学的裏付けのないこともわかってきた。こうした状態でカジノ法案を成立させて良いのか、疑問は増えるばかり。

 カジノを巡ってはラスベガスのカジノ王、シェルドン・アデルソン氏が昨年9月に大阪府知事や大阪市長らと面談していたことが報じられている。政府案の面積規制に「我々が望んでいたようなIRを実現できない」と批判いたといい、規制はその後変更なった。アデルソン氏はトランプ氏の「選挙支援者」だそうだ。山本議員は「さっさと成立させろと言っているのは利害関係者だけでしょ」と指摘し、政府・与党の対応をけん制した。

 国民民主党の舟山康江参議院国会対策委員長は「刑法で禁じられているギャンブルを民間がやる。違法性が本当にないと言えるのか」と、自由党の森ゆうこ参議院会長は「カジノ業者は貸金業ができるが貸金業法の対象外」、社会民主党の福島みずほ副党首は「誰のための政治か」と疑問を呈した。国民の為というなら、今国会での成立でなく、世論の半数近くが支持する程度にまではIR法案の説明に政府・与党は努めるべきだ。
 
 一説に世論の批判の多い法案だけに統一地方選や参院選挙から少しでも期間が開くこの国会で強行するほうが与党に都合が良い、との計算があるとの見方もある。参院選挙制度の変更(定数6増、うち4議席は特定枠=得票数にかかわらず当選が保証されるような拘束名簿式導入)案同様、党利党略の国会運営、政策色が強まっている。政府・与党には自重した丁寧な説明が求められる。(編集担当:森高龍二