「裁量労働制」拡大へ 厚労省調査

2018年07月27日 07:04

画・「裁量労働制」拡大へ 厚労省調査

あらかじめ決めた時間を働いたと見なすことができる「裁量労働制」について、厚生労働省は今年の秋にかけて対象拡大のための検討を行う。

 あらかじめ決めた時間を働いたと見なすことができる「裁量労働制」について、厚生労働省は今年の秋にかけて対象拡大のための検討を行う。働き方改革関連法の成立に伴って、柔軟な働き方を促進することが目的だ。

 裁量労働制とは実働労働時間ではなく、一定時間と見なす労働時間制度のことだ。時間管理を個人が行うことになるため、勤務時間の規定も出退勤の時間も存在しなくなる。好きな時間に出退勤でき、どのくらい働いても良いということだ。しかし労働時間の概念は存在し、何時間働いても一定時間働いたと見なされる。この労働時間は労使間で協議して決定される。例えば労使間の協議の結果みなし労働時間を8時間に決定した場合、9時間働いても1時間分の残業代は出ない。一方7時間しか働かなくても8時間働いたと見なされることになる。もちろん深夜労働、休日労働に関しては割増賃金が支払われる。労働者がより効率的に成果を上げ、成果によって評価されるという点で大きなメリットがあるが、いくら残業してもみなし労働時間しか働いていないことになってしまいブラック企業を利するというデメリットもある。

 現在裁量労働制は時間配分などを大幅に労働者に任せた方が良いと考えられる業務に対してのみ適用されている。具体的には公認会計士や弁護士、デザイナー、プロデューサーなどの専門業務型裁量労働制、企業の中核を担う部門において企画立案などを行うホワイトカラー労働者に対する企画業務型裁量労働制が挙げられる。厚生労働省としては経済界の後押しを受けて有識者を集めた検討会で早期に議論を深めたいところだ。

 確かに短時間で成果が出せる労働者にとっては裁量労働制には大きなメリットがあると言える。しかし裁量労働制には、過度に成果を重視しすぎるあまり労働者の業務時間をいたずらに引き延ばす危険も潜んでいる。今後対象業務の拡大を検討するのであれば、裁量労働制においても明確に適用される残業の上限を設定するなど過労を防止する制度の整備も必要になるだろう。(編集担当:久保田雄城)