右肩上がりの成長を続ける高音質オーディオ市場。2018年8月8日、昨年あたりから度々噂に上がっていた、ハイエンドオーディオ機器向けのD/AコンバータIC(以下、DAC)チップの製品化技術の開発をロームがついに発表し、世界のオーディオ機器メーカーやオーディオファンの間で話題になっている。
近年のハイレゾ音源の普及には目覚ましいものがある。高音質な音楽はこれまで、クラシックファンやジャズファンなどが高額な専用機器で楽しむものという特別なイメージがあった。ところがインターネットを通じて音楽をデータで配信できるようになって、その流れはガラリと変わってきた。コンテンツ配信サービスで音楽データを入手し、パソコンからUSB DACなどを通じてオーディオ機器に出力するだけで、手軽に音楽用CDを超える高音質の楽曲を再生することができるのだから、コアな音楽マニアじゃなくても興味が湧くのは当然だろう。オンキヨーが運営するハイレゾ音源配信ストアの国内大手「e-onkyo music store」によると、近年のハイレゾ音源市場の成長を牽引しているのはアニソンだという。
一度ハイレゾ音源を体験すると、さらに高音質なオーディオ機器への欲求が高まってくる。中でもオーディオ用DACチップはオーディオ機器の音質を決める最重要部品の一つ。ロームが開発中のDACチップは、同社の50年にわたるオーディオICの製品開発において確立した「音質設計技術」の集大成ともいえるものだ。オーディオ製品における最も重要な特性である低雑音と低歪率で世界最高クラスを実現。その上、度重なる試聴評価によって音質に磨きをかけているという。2018年5月にドイツ・ミュンヘンで開催された高音質オーディオの世界的見本市「HIGH END」で初公開された際には、「製品化されれば、即採用したい」と各国のメーカーから非常に高い評価を得ていることからも、音楽文化の新たな可能性を拓く製品として期待が持てそうだ。
ロームはさらに、オーディオデバイスとして要求される数値性能と音質性能をともに極限まで追求した、最高峰のデバイスブランドとして、ROHM Musical Device 「MUS-IC」(ミュージック)のリリースも発表した。同ブランドは、ロームのハイエンド向け製品の中でもとくに最上位モデルに搭載されることを前提に設計された製品群で、ロームの音質責任者の音質評価に合格した製品だけを「MUS-IC」に認定するという。既に公開されている「MUS-IC」特設WEBページでは、これまで同社が行ってきた音楽支援にまつわる話も掲載されており、このブランドに懸ける思いが伺える。
「耳が肥える」という言葉があるが、人間の耳は、良い音楽を聴き込んでいくと、音を味わう能力が豊かになるという。ハイエンドオーディオ機器向けのICが普及すれば、今よりももっと、音楽の楽しみが深まるかもしれない。(編集担当:松田渡)