現在、日本の産業は著しい人手不足の状態にある。直近6月の有効求人倍率は1.62倍で極めて高い水準にあり、しかも上昇傾向を維持している。
深刻な人手不足の背景には少子高齢の人口動態を前提とした生産年齢人口の減少がある。これは絶対量の問題だが、人手不足はそれだけではなく、技術革新の急速な変化の中で必要な人材が多様化し、求める人材の確保が難しいという質の問題もあり、これは日本のみでなく世界的な課題となっている。
総合人材サービスのマンパワーグループが日本を含む世界43カ国・地域の雇用主3万9195人を対象に人材確保に関し調査を実施し、その集計結果を公表した。
「昨年と比べて人材確保に苦労しているか」という質問に対して、「感じている」と回答した雇用主の割合はグローバル平均で45%に達し、2017年の40%から5ポイント上昇している。長期的推移を見ると10年から一貫して上昇傾向で推移している。
国別に見ると、日本がトップで89%となっており、昨年の86%から3ポイント上昇し、世界の中でも日本が著しい人材不足の状態にあることがわかる。長期推移を見るとデータのある06年から一貫して上昇傾向を維持している。
以下、高い国・地域をみると、ルーマニアが81%、台湾が78%、香港が76%、ブルガリアが68%という順で、もっとも低いのが中国の13%となっている。
人材確保が困難な職種を見ると、グローバルでは多い順に熟練工、営業・販売職、エンジニアとなっており、日本ではエンジニア、営業・販売職、ITスタッフの順となっている。
人材不足解消のための戦略については、「教育研修・能力開発の充実」が54%で圧倒的に高く、次いで「学歴・経験など必須資格の緩和」が36%、「既存の人材プール以外からの採用」が33%、「手当・福利厚生の充実」が32%、「新たな就労モデルの活用」が30%の順となっている。
増加傾向にあるものを見ると研修拡充や新しい雇用・就労モデルの拡充などが多く、既存の人材やシステムでは対応が難しい現況のようだ。
テクノロジーの発展・普及を背景に消費者主義が広がりをみせ、その業務内容は10年前と一変している。市場にいる既存の人材の中からこれらの需要を満たす人材を確保することは難しい。変化し続ける職務に対応するためには企業が新たなスキルをもった人材を育てる必要があるようだ。(編集担当:久保田雄城)