政府・与党は原発ゼロ法案に向き合うべき

2018年11月23日 14:30

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安全性を検討する新たな材料が見つかれば「評価をやり直す」のは当然で、「火山灰層10センチで許可を得ている大飯・高浜原発は直ちに運転を停止せよ」との声も上がっている

 関西電力の「美浜原発」「大飯原発」「高浜原発」の3原発(いずれも福井県)について、原子力規制委員会は大山(鳥取県)の噴火規模の評価を見直し、大規模噴火の際、火山灰が想定を超え降り積もる可能性があることから影響の再評価をする方針を決めた。

 判断を高く評価したい。甚大な原発事故発生では生態系全体への深刻な影響を含め、取り返しのつかない事態を招くことは不幸にも東京電力福島第一原発事故で実証済みだ。

 関西電力は大山噴火の場合でも原発敷地内の降灰は「10センチ程度」としていた。そして高浜原発3号機、4号機、大飯原発3号機、4号機を再稼働している。

 しかし、約8万年前の噴火で原発と同程度の距離にある京都府内で約30センチの火山灰層ができたとの研究論文が発表され、原子力規制委員会が現地調査を実施した。その結果、25センチの火山灰層があると判断。噴火の影響について再評価することを決めたという。

 安全性を検討する新たな材料が見つかれば「評価をやり直す」のは当然で、「火山灰層10センチで許可を得ている大飯・高浜原発は直ちに運転を停止せよ」との声も上がっている。非常用ディーゼル発電機のフィルター能力の審査も「火山灰層10センチ」を前提としたものだったから「25センチ」を前提とした評価に見直す必要がある。本来、原発ゼロへの方向に努力すべき状況で、あえて稼働させる以上、安全性評価に終わりはない。

 特に原発事故で懸念されるのは、人への被害はもちろん、生息する生態系への悪影響だ。科学ジャーナリストの倉澤治雄氏は日本獣医生命科学大学羽山伸一教授のニホンザルに関する一連の研究からの成果を紹介し「日本の野生生物の中で、分類学的に人間に最も近縁な霊長類であるニホンザルが、福島第一原発事故による放射線被ばくにより、血球の減少や胎仔の低体重および脳の発達遅滞に陥っている」と生態系への深刻な影響の一端をネットで発信している。「被曝ニホンザルは警告する」を検索し、全文読んでいただきたい。

 倉澤氏は「被ばくニホンザルはものを言わない。しかし血液や胎仔に現われた異変は、人間の健康影響の先行指標と言えるだろう」と警告。そして「人間は自然から学ぶべきである。被ばくニホンザルの警告に、私たちは謙虚に向き合うべきだろう」と警鐘を鳴らす。

 生態系への影響を政府、大学の専門機関が継続調査することを事故発生以来、筆者も求めてきた。生態系への影響が懸念通り起こりつつあることに、原発事業者への怒りが収まらない。

 原発事業者と原発を推進してきた政府はどう責任をとれると考えているのだろう。東電は人のみに責任を負っているのではない。自然界すべてに重い罪を犯したことを自覚すべき。被害を訴えられぬ動植物のために。そして政府と東電は廃炉と除染に全力で取り組め。関電は原発依存体質から一日も早く脱却する努力をせよ。政府・与党は原発ゼロ法案に向き合い、国会で審議に入れ。(編集担当:森高龍二)