2019年注目すべきモータースポーツ、「フォーミュラE」の 2018-2019シーズン5開幕戦が、サウジアラビア首都リヤド郊外のディルイーヤで12月15日に行なわれた。フォーミュラEは、F1と同じ国際自動車連盟が管轄する電気自動車の世界最高峰のレースで、各チームは最新技術を集結させたマシンでスピードと技術を競う。ガソリンエンジンなどを利用する既存のモータースポーツと比べ、駆動音はとても静かで、走行中に排気ガスを放出しないため、レースは市街地の公道で行われるのが特徴だ。世界中で電気自動車・自動運転車などの開発が進む中、ヨーロッパでは電気自動車へのシフトが加速しており、大手自動車メーカーが続々と参戦するフォーミュラEの注目度もあがっている。
シーズン5となる2018-19シーズンは、日本から日産自動車、ドイツからBMW、HWA(メルセデス系列)など大手自動車メーカーが新たに参戦し、レースに使う競技車両も同一仕様のバッテリーユニットと基本構成部分(シャシー)が一新され、大きな節目となりそうだ。
新しくなったシャシーは「Gen2」と呼ばれ、2021-2022シーズン8までの4シーズン使用される予定だ。また、ボディの一部が前後のタイヤを完全に覆うような形状となる。レーシングカーといえばむきだしのタイヤが連想されるが、この形状変更によりこれまでのレーシングカーイメージから一線をひいたといえる。先行車の後輪に後続車の前輪が乗り上げるフォーミュラカー独特の事故を防ぐことにもつながるだろう。
レース方式も大きく変わった。先シーズンまでの決勝レースでは、規定のバッテリー容量の関係で、レース途中にドライバーはマシンを乗り換える必要があったが、バッテリーが見直され、小型化・大容量化が図られた。その結果、電力量は28kWhから約2倍の54kWhに増え、1つのマシンでレースを走りきることが可能になった。最大出力は250kW(レース時200kW)、最高速は280km/hに上限を見直している。
こうした電力をコントロールするうえで重要なのが、バッテリーから駆動用モーターに供給する電力を直流から交流に変換し、制御するインバーターの性能向上と小型化だ。フォーミュラEチームの中で象徴的な例を上げると、チーム・ヴェンチュリーが日本の半導体・電子部品メーカーであるロームとオフィシャル・テクノロジー・パートナーシップ契約を締結し、ローム製のフルSiCパワーモジュールをマシンに搭載することで、駆動モーターをコントロールするインバーターの高性能化を図っている。シーズン4時点で、SiCパワーモジュール搭載以前のインバーターと比べ、43%の小型化と6kgの軽量化を実現しているという。
フォーミュラE「シーズン5」は前季よりも1戦多い全13戦が組まれ、19年7月の米ニューヨークで開催される最終戦まで、ドライバーズポイントとチームポイントを競う。12月15日に全11チームで競われた初戦は、今シーズンから参戦する、BMWのアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ選手が 優勝を勝ち取った。2位はDS・テチーターのジャン=エリック・ベルニュ選手、3位表彰台にはマヒンドラ・レーシングのジェローム・ダンブロシオ選手が立った。また、ドライバーの勝敗のほかに、チームとしての勝負もある。1チーム2台のマシンがレースに参戦しており、2人の合計獲得ポイントで勝敗を決めるチームポイントでは、初戦を終えてトップに立ったのがDS・テチーターだ。初参戦した日産自動車のチームは、6位にセバスチャン・プエミ選手、7位にオリバー・ローランド選手が入り、チームポイント4位という滑り出しとなった。
昨シーズン、ル・マン24時間などレースに代表されるWEC(世界耐久選手権)から撤退し、フォーミュラEに注力 したアウディが総合優勝を飾り、今季から新たに参戦したBMWの初戦優勝で話題をまくフォーミュラE。日産自動車、メルセデス系HWAの活躍も期待できそうだ。また、来季にはアウディと同じくWECから撤退したポルシェの参戦も予定されている。FIA(国際自動車連盟)が管轄するモータースポーツ・カテゴリーで「フォーミュラE」が話題のレースになることは間違いなさそうだ。
フォーミュラE第2戦は北アフリカ、モロッコの首都マラケシュで新年1月12日に行なわれる。マラケシュの1月は冬とはいえ、日中は摂氏35度近くまで気温が上昇する。そのため、インバーターの冷却を含めた電力管理が重要なポイントとなるだろう。(編集担当:吉田恒)