統計不正で総理、国会で陳謝、徹底検証を約す

2019年01月29日 10:43

 安倍晋三総理は第198回国会での施政方針演説で基幹統計である毎月勤労統計が不正に行われ、政府統計に対する国民の信頼を大きく棄損している問題について「勤労統計について、長年にわたり、不適切な調査が行われてきたことは、セーフティネットへの信頼を損なうものであり、国民の皆様にお詫び申し上げる」と陳謝した。

 この問題では厚労省がアベノミクスによって労働者の賃金が大きく上昇しているように見せかける操作をしたのではないか、との疑義が生じている。野党からは「アベノミクスの偽装だ」「実質賃金は下がっているじゃないか」などの批判の声があがった。

 実際、昨年6月の毎月勤労統計調査(速報値)で労働者1人あたりの平均賃金(パーと含む)は名目賃金で現金給与総額44万8919円と前年同月比で3.6%増え、21年5か月ぶりの高い伸びになったとされ、その後の確報値でも3.3%の伸び。その後、修正された数値でも2.8%の伸びとしているが、総務省大臣官房審議官は「統計委員会の見解としては、伸び率は1.4%でみるべきだ」と国会閉会中審査の委員会で答えた。統計への信頼は大きく揺らいでいる。

 加えて、なぜこうした問題が発生しているのかを調べた厚労省の特別監察委員会の調査に対しても職員からの聞き取りに厚労省官房長が同席するなどしていたことがわかり、調査の中立性、客観性が担保されていたといえるのか、手法にも疑問が投げられた。

 安倍総理は批判を受けながらも「雇用保険、労災保険など過少給付について、できる限り速やかに、簡便な手続で不足分をお支払いする」と述べるとともに「基幹統計について緊急に点検を行ったが、引き続き、再発防止に全力を尽くす。統計の信頼回復に向け、徹底した検証を行う」と今後の対応での理解を訴えた。今後の国会論戦のひとつになる。(編集担当:森高龍二)