東京商工リサーチが2018年のGS(ガソリンスタンド)の倒産状況を発表。18年のGS倒産は35件で前年比25.0%増、前年比が5年ぶりに増加。エコカーや高齢化等で地方を中心に需要減。GS過疎地に拍車。
地方では自動車が生活必需品である、ということは常識であろう。人口が減少する地方では公共交通機関が少なく、商業施設、公的機関、医療機関などが駅や中心市街地から遠い郊外に立地されているところがほとんどだ。地域住民が自動車を使わずに生活することはほぼ不可能と言って良いだろう。しかしここに矛盾がある。近隣市街地の衰退は人口減少による需要の減少が要因だ。自動車を使用するためには欠かせないGS(ガソリンスタンド)も需要が減少し経営環境が厳しくなっている。このため、一つの自治体にGSが3カ所以下の「GS過疎地」が現在、増加傾向のようだ。
8日、東京商工リサーチが2018年「ガソリンスタンド」の倒産状況について集計結果を公表した。2018年のGS倒産は全国で35件、前年比25.0%の大幅な増加となって5年ぶりに前年を上回った。負債総額は63億8100万円で前年比53.2%の増加となっている。
法的整理や私的整理などの倒産以外の「休廃業・解散」で事業停止に至った件数は198件で前年に比べ36.5%増加、最近5年で最多となっている。
倒産に至った原因をみると、「販売不振」が24件で前年に比べ26.3%の増加と最も多く全体の68.5%を占めている。倒産の形態をみると、破産が30件と前年比36.3%の増加で全体の85.7%と大多数を占めている。一方、民事再生法によるものは1件もなく、再建が不可能なケースが多いことを示唆している。レポートでは「事業不振だけでなく業界の先行きが不透明なことも、事業承継がスムーズに展開できていない要因の一つ」と見ている。
地域別にみると、全国9地区のうち北陸を除く8地区で倒産が発生しており、近畿が8件で最も多く、次いで関東と中部が各7件、東北で5件、九州が4件、中国で2件、北海道1件、四国1件の順となっている。都道府県別では22都道府県で発生しており、大阪の5件が最多となっている。
レポートでは「エコカーの普及や高齢化に伴う運転者の減少、これに地方経済の低迷も加わり、ガソリン需要は落ち込み」「経営は厳しさを増している」としている。GSは大都市、地方を問わず社会インフラである。人口の減少が需要の減少につながり社会インフラの減少を生み出し、これによる利便性の低下、生活のしづらさが人口減少に拍車をかける悪循環が発生する。東京一局集中を緩和し、均衡の取れた国土の発展を実現するためにも業界の努力とともに行政の適切な対応が期待される。(編集担当:久保田雄城)