生まれ変わる、百貨店の化粧品売り場。なぜ、20代の女性客が徐々に増えている?

2019年03月03日 10:36

画・上場企業好益の一方て_消費者動向・景気ウォッチャーは悪化 消費者との乖離激しく

百貨店の化粧品売り場に10代後半や20代前半の若い女性たちの姿が戻り始めているという

 百貨店の化粧品売り場に変化が現われている。百貨店の一階といえば昭和の時代から、高級化粧品ブランドが軒を連ねるイメージが強い。

 近年は、ネット通販やドラッグストアコスメなど、化粧品業界では多様な販売チャンネルが生まれているが、それでも化粧品を取り扱う企業にとっては、百貨店の一階に華やかな店舗を構えることはブランド力の強化にもつながり、自社の「顔」ともいえる。また、百貨店側にとっても顧客が必ず通る一階の売り場は店の顔でもあり、それがそのまま百貨店自体の信用やブランドイメージにもつながりかねない。そういう意味では、高級ブランド化粧品の店舗を集めたというよりは、信頼できるブランドを厳選したら高級志向の店舗だけが残ったともいえるかもしれない。

 しかし、百貨店業界の低迷とともに、化粧品売り場の売り上げも以前に比べて芳しくなくなっているのも事実だ。日本百貨店協会が2月23日に発表した2018年の全国百貨店売上高は、5兆8870億円。既存店ベースで前年比0.8%減となった。同協会では西日本豪雨や台風21号、北海道地震などの災害の影響で一部店舗の休業や消費意欲の落ち込みがあったとしているが、それを加味しても、10年前は7兆円を超える売り上げを記録しているだけに低迷期にあると言わざるを得ない。品目別にみると、インターネット通販などとの競合で苦戦し、3.1%減となった衣料品に比べて、化粧品は9.5%増と一見、好調のようにも思えるが、訪日外国人によるインバウンド需要が大きいとみられ、純粋な国内消費者の売り上げとしては疑問符が残る。

 ところが、その一方で 百貨店の化粧品売り場に10代後半や20代前半の若い女性たちの姿が戻り始めているという。

 百貨店の化粧品売り場は多くの場合、そこに常駐する美容部員のカウンセリングやタッチアップによって最適な化粧品を選んでもらう「カウンセリング販売」という独特の手法をとっている。その場でプロにメイクを施してもらい、自分の顔や肌に合った化粧品をプロの視点から選んでもらえるという大きなメリットがある反面、顧客が自分で自由に商品を探しにくく、気の弱い人なら、一歩足を踏み入れたが最後、何か購入しないと帰りにくく思えてしまうなどのデメリットもあった。また、ドラッグストアなどのバラエティコスメなどでみられる数百円から2千円前後で買えるような商品はほとんど皆無で、若い層には敷居が高い。店側もこれまで、中堅層から富裕層にターゲットを置いていた。

 それではなぜ、百貨店の化粧品売り場に若い女性客が戻ってきたのだろうか。その背景には、フロアの改装や体験型サービスの導入など、顧客の興味を引くための百貨店や店側の努力がある。また最近の傾向としては、既存の高級ブランドにこだわらず、若い女性や肌に悩みを抱える女性の要求にこたえる店舗を積極的に取り入れているのも一因だろう。

 例えば、セレオ八王子のイセタンコスメティクスでは、最近、美容関連業界で話題になっているハチミツやローヤルゼリーを使ったアピセラピーに着目し、3月1日にミツバチ産品の製造販売で知られる山田養蜂場のショップをオープンした。同社では、ミツバチの力が話題になる以前から、ローヤルゼリーを配合した化粧品などを通販や直営店を通して販売し、人気を博していた。セレオ八王子の店舗では、同社化粧品の主力ブランドである「RJエクセレント」シリーズをはじめ、それぞれの顧客の肌にあう商品を、百貨店ならではの「カウンセリング販売」方式で勧めている。山田養蜂場だけでなく、こういった新規参入の店やブランドが徐々に増えていることで、選択肢も広がり、それがSNSの投稿などで「話題のデパコス」として紹介されることも多い。

 手軽さにおいては、ネット通販やドラッグストアなどには及ばないが、百貨店だからこその新しい魅力が生まれつつあるのかもしれない。(編集担当:石井絢子)