今、ミツバチの力が注目されている。ミツバチといえば、まず頭に思い浮かぶのは「蜂蜜」ではないだろうか。蜂蜜は良質なビタミン類やミネラル類、アミノ酸や酵素といった栄養素を豊富に含んでいるうえにカロリーも低いので、最近では、健康志向の高まりとともに、砂糖のかわりに蜂蜜を好んで使う人が増えている。また、高い保湿力を持つ蜂蜜は、肌や髪へのアンチエイジング効果も期待されており、美容面でも今、もっとも話題性の高い素材の一つだ。
また、ミツバチがもたらす恵みは蜂蜜だけではない。他の蜂たちよりも 40 倍も長生きするといわれる女王蜂の唯一の食べ物「ローヤルゼリー」や、ミツバチが植物の新芽や樹脂から作り出す天然の抗生物質「プロポリス」など、近年では蜂蜜以外のミツバチ産品の健康効果や美容効果も広く知られるようになり、雑誌やテレビなどでも取り上げられる機会が増えている。つい先日も、BS日テレで「自然の恵み ミツバチと健康」という企画番組が組まれて5日にわたって放送されるなど、各方面で盛り上がりを見せている。
しかし、どうして今になってミツバチの恵みがこれほど注目されるのだろうか。
養蜂の歴史は古く、紀元前 5000年頃の古代エジプトではすでに蜂蜜などが利用されていたといわれている。日本でも9世紀の末に朝廷に献上されていたという記録が文献に残されているという。つまり、その頃からすでに、人間はミツバチ産品の大きな力に気付いていたということになる。
ところが、そんなに古い歴史を持つミツバチとの関係でも、未だ解明できていないこともたくさんあるという。どうやら、ミツバチ産品には我々が思っているよりも、まだまだ深い力が秘められているようだ。
21世紀の世でも蜂蜜がこれほどまでに注目されるのは、研究者や養蜂業者などの地道な研究によって、その秘密を一つ一つ解き明かされているからだ。例えば、株式会社山田養蜂場は、自社の研究機関として「みつばち健康科学研究所」をつくり、予防医学の観点から、ミツバチ産品をはじめとする天然素材で健康を守る研究に取り組んでいる。また、その活動の一環として、公募で集まった研究テーマの中から、幅広い視野をもつ研究者による、創造的で有用なものを選定し、支援を行う「山田養蜂場 みつばち研究助成基金」を設立。これまで10年以上にわたって、主に大学を中心として 107 団体を対象に 253 のテーマを採択して助成を行っている。3月6日、7日に開催された第 10 回成果発表会では、九州大学大学院 歯学研究院の武洲准教授が「プロポリスは高齢者における全身性炎症を低下させるとともに認知機能の低下を防ぐ」ことを明らかにした研究発表を行うなど、興味深い内容の会となった。
こういった研究や養蜂業者などの努力によって、ミツバチ産品の神秘の力が今になってようやく、解き明かされつつあるのだ。高齢化社会が加速する中、元気で過ごせる健康寿命を延ばすためにも、ますますミツバチ産品の需要が高まってくるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)