国土交通省はタクシー運賃のルールを見直し、乗車前に運賃を確定する新サービスを2019年度から全国で導入することを決めた。これまでのような、タクシーを降りる段階にならないと運賃が確定しないことに対する乗客の不安を解消し、渋滞や迂回で運賃が高くなる不安をなくし、利便性を高め、需要を喚起する狙いがある。タクシー利用者の裾野を広げ、訪日外国人客も安心して乗れるようにする。この4月を目途に道路運送法上の通達を改正し、地方運輸局の準備が整った地域から導入する。早い地域では年内にもサービスが始まる見通しだ。
タクシー会社がこのサービスを導入するには事前に運賃を計算するシステムソフトが必要で、それぞれの会社がスマートフォンの配車アプリを使うことになる。スマホ配車アプリなどを使って客が乗車地と目的地を入力。表示される経路と運賃に納得すれば確定となり、事故などの渋滞で運転手が独自判断して経路変更しても運賃は変わらない。
利用客は、距離や時間に応じた従来通りのメーターによる運賃を選ぶこともできる。客の都合で経路を変更した場合は途中からメーター運賃に切り替わる。天候やイベントなどによる大規模な交通規制の発生など、サービスが利用できなくなるケースもある。このあたりの制度の周知がなかなか厄介かもしれない。
運賃は距離に応じて計算されるルール上のタクシー運賃に一定の係数をかけて計算する。国交省とタクシー大手が2017年に行なった実証実験では、事前確定運賃とこれまでのメーター運賃との乖離は0.6%にとどまったという。また、実証実験で利用した乗客の7割が「また利用したい」と好反応だったことから、国交省は制度化に向けた検討を続けてきた。
事前確定運賃を適用するタクシー会社は国交省にアプリの概要や輸送実績などを届け出て認可を受ける必要がある。また、この運賃方式でサービスを提供する場合、乗客の同意を得て運行し、運転手の都合でルートを変更する場合には客の了解が必要だ。
ただ、都心の霞ヶ関や大手町、在京TVキー局周辺で多い、深夜専門に長距離客だけを狙う個人タクシーへの導入は、どうするのかについては触れていない。
タクシーの利用は年を追う毎に漸減しており、2017年度のタクシー輸送人員は2000年度に比べて4割も減った。ただ、高齢者や訪日観光客が増え、安心・簡便な移動手段に対するニーズは増えているという試算もある。国交省では、他人同士が割り勘で運賃を支払う「相乗り型タクシー」の解禁も検討している。が、いずれもスマホアプリを活用することで規制緩和しようという試みだ。スマホが利用できない高齢者などのデジタル難民がますます増加する心配もある。また、前述の個人タクシーがこの制度に加われない場合、常連顧客囲い込みのために何らかの手段を講ずる可能性は否定できない。(編集担当:吉田恒)