IoT(インターネット化された機器)はAI(人工知能)やビッグデータとならんで新しい時代のテクノロジーを表現する決まり文句になっている。主に企業などで用いられるAIなどと違ってIoTは企業での利用はもちろんのこと、既に電気量販店にも多くのIoT家電が並んでおり、より消費者に近い存在だ。家庭内の様々な機器をIoTでつなぐスマートホームという概念も登場し、法人部門に負けず劣らず個人消費者、家庭部門でもIoTは大きな盛り上がりを見せているようだ。
IT専門調査会社のIDC Japanが11日、国内IoT市場に関する用途別・産業分野別の予測を発表している。レポートによれば、国内IoT市場の規模をユーザー支出額で見ると2018年の実績見込額は6兆3167億円となっている。18年から23年の年間平均成長率は13.3%になるものと予測され、その結果23年には11兆7915億円にまで達すると見込まれている。
主要産業分野の23年までの動向を見ると組立製造、プロセス製造、官公庁、公共・公益、小売、運輸での支出額が目立っており、特に製造業の支出額が突出している。これは日本の産業構造における製造業の割合が大きく、さらにその製造業のIT化を推し進めることで産業競争力を高めていこうとする国の政策が背景にあるとレポートではみている。
個人消費者のIoT支出額の成長は全産業分野と比べて相対的に高い傾向で、23年での推計値では組立製造に次いで2番目に大きい市場になるものと予測される。この背景には対消費者に強みを持つ大手ベンダーを中心に深層学習などの高度なデータアナリティクス技術をIoTと融合しスマート家電やスマートホームオートメーションといった概念で個人や家庭向けの新規サービスの創出に力を入れていることがあるとレポートでは推測している。
個人消費者向け以外で成長性が高いものとしては、農業フィールド監視、小売店舗内リコメンド、コネクテッドビル、スマートグリッド、テレマティクス保険などがあり、18年~23年の成長予測値は20%を超えている。
IDC Japanシニアアナリストの鳥巣悠太氏は「IoTに対する支出額は世界的に高い成長が見込まれる」、「海外で今現在成功しているユースケースを国内向けにカスタマイズして取り入れることで、ベンダーの新しい収益につなげることが重要」と指摘している。IoT普及についてはセキュリティ上の懸念も指摘されているが当面は堅調に推移しそうだ。(編集担当:久保田雄城)