領土教育、道徳教育、教諭は心して対応を

2019年04月07日 15:16

画・アクティブラーニング導入の高校、90%。半数が意欲向上効果ありと評価。

来年4月から小学校で使用される教科書。すべての発行会社が『政府見解に沿う』形で「北方領土」「竹島」「尖閣諸島」は『日本固有の領土』と表記した

 安倍政権下で「防衛」「原発」「福祉」「教育」に大きな変化が起こっているが、将来に危うさを特に覚えるのが小学教育での「道徳教育」「領土教育」だ。

 来年4月から小学校で使用される教科書。すべての発行会社が『政府見解に沿う』形で「北方領土」「竹島」「尖閣諸島」は『日本固有の領土』と表記した。

 教科書検定意見では「竹島は『日本の領土』でありながら」との表記に意見が出され「竹島は『日本固有の領土』でありながら」に教科書会社が修正。尖閣については「中国が領有を主張している」との表記に「尖閣諸島の支配の現況を誤解する恐れがある」とされ『領土問題は存在しません』と両国間に領土問題が存在しないことを強調する表記を加える修正が教科書会社で行われた。

 領土問題は難しい。右も左もわからない小学5年、6年の児童に『日本固有の領土』とどのように教えるのか。いずれも相手国があり、相手国の言い分を踏まえた教育こそ国際感覚を身につける教育には必要だろう。現場で教壇に立つ教諭がどのように子どもたちに難しい領土問題を教えていくのだろうか。大変さを察する。

 ロシア外務省報道官は小学校教科書検定の結果に早くも反応し「プロパガンダだ」と非難していることが報じられた。子どもたちは学校で韓国、中国、ロシアの主張を知り、日本の主張を知り、そのうえで「固有の領土」と受け取ることになるのか。

 政府が特定の方向に「固有の領土」として、子どもたちに「刷り込んでしまう」教育にならないか。

 文部科学行政事務方トップだった前川喜平氏は「論争の原則」に照らし「異なる意見がある場合、両方の意見を伝える必要がある」と講演で語った。最もなことだ。

 加えて「教育は憲法に則って行われなければならない。でなければ国民を国家の犠牲にしてしまう危険がある」とも語った。言い換えれば「政治が教育を支配してはならない」ということだ。

 「領土問題は尖閣諸島においては存在しない」(政府見解)。一方で「竹島」「北方領土」においては「存在している」。この事実を偏向することなく、伝えることが必要だ。

 戦時、天皇は「現人神」と児童らに教えたという。公の場でも「天皇」を「現人神」という呼称で用いることがあったという。特定の政治的意図をもって思想や意識付けを時の政府が行うことはあってはならない。

 歴史的事実、現況として起こっている事実を示していくことで、子どもたちが国際人としてのバランス感覚を備えた人材に育つよう、憲法に則った教育を強く求めたい。小学児童への「道徳教育」「領土教育」は特に慎重にあるべき領域だ。教諭は心して対応してほしい。(編集担当:森高龍二)