日本政府は、2020年までに年間4000万人のインバウンド旅行客の迎え入れを達成するという目標を掲げているが、それも実現へ向けて着実に近付きつつあるようだ。
そんなインバウンド市場の急速な成長に伴って、国内の各主要都市ではホテルの建設ラッシュが続いている。東京、大阪、そして日本屈指の観光都市である京都はもとより、中部地方最大の都市である愛知県名古屋市でも、建設ラッシュが巻き起こっている。愛知県はトヨタグループをはじめ、製造業の本社が数多く存在し、会社イベントや会議などが頻繁に行われるエリアでもある。また、豊かな歴史・文化を有する名古屋を訪れる観光客も多く、インバウンドにも人気が高い。
法人向け不動産サービスCBRE日本本社の調べによると、政府目標の訪日外国人年間4000万人が達成された場合、名古屋において客室数が不足するという試算が出されている。ホテルの新規開業は、名古屋の今後の発展にとって、非常に重要な項目と言えるのだ。
そんな中、今年4月には、マリオット・インターナショナルと積水ハウスが、名古屋市内に新しいホテル「コートヤード・バイ・マリオット名古屋」を2022年春に開業することを発表した。読売新聞中部支社旧社屋跡地の2万2千平方メートルの広大な土地に建設される同ホテルは、10室のスイートルームを含む全360室のゲストルームで、ビジネスのみならず、インバウンドを含めた観光客もターゲットに据えている。
マリオット・インターナショナルといえば、マリオットやリッツ・カールトンなど様々なブランドのホテルや宿泊施設を世界各地で展開する多国籍企業。一方、積水ハウスは日本を代表する大手住宅メーカーだ。実は両社の協業は今回が初めてではなく、これまでにも、大阪の「セントレジスホテル大阪」、京都の「ザ・リッツ・カールトン京都」、愛知の「フォーポイントバイシェラトン名古屋 中部国際空港」などを協業で成功させてきた実績がある。また直近では、今後のインバウンド需要のさらなる拡大と国内旅行スタイルの多様化を見据えて、2020年秋からまずは5府県15カ所1000室規模でロードサイド型ホテルを開業する地方創生事業「Trip Base 道の駅プロジェクト」を始動させるなど、積極的な協業事業を展開している。
そんな両社が名古屋に開業する「コートヤード・バイ・マリオット名古屋」の特徴は、スタイリッシュな心地良さと、スマートな機能性。今後、更にインバウンド旅行客が増加しても、宿泊先がビジネスホテルばかりでは話にならない。かといって富裕層狙いのラグジュアリーホテルばかりでは、気軽に宿泊できなくなってしまう。そこで「スタイリッシュな心地良さと、スマートな機能性」を両立させた新機軸のホテルを計画しているという。
「コートヤード・バイ・マリオット名古屋」の他にも名古屋では、中日新聞社が、2024年度完成を目指して建替え中の「中日ビル」の高層部には、三菱地所系の「ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ」が出店を予定するなど、続々とホテル開発が進んでいる。
名古屋を中心にホテルの新しい波が生まれつつあるようだ。海外旅行者ならずとも、国内旅行で一度は訪れてみたいものだ。(編集担当:今井慎太郎)