同一労働同一賃金の取り組みにはメリットもあればデメリットもある。しかし同じ内容と分量の仕事をしているからには、雇用形態に関わりなく同一の賃金が支払われるべきという考え方そのものは理にかなっているはずだ。労働の在り方を示す新しいルールとして、同一労働同一賃金を法的に定める事は国の方針にもなっている。
とは言え新たなルールを導入するに当たって、あらゆる問題を解消して行かねばならないのが企業等の現場である。制度導入は2020年4月より本格的に始められるが、大企業の7割以上についてはいまだにこの制度に対してどのように取り組んでいくべきなのか方針が定まっていない。この割合はアデコが実施したアンケート調査によって判明し、法律の施行によって影響を受ける企業には少なからず戸惑いが生じている事が分かった。
アンケートの調査対象となったのは、勤め先が従業員300人以上の大企業で人事業務に関わっている500人だ。同一労働同一賃金への取り組みに関する方針は決まっているかとの問いに対し、既に決まっているとの回答はわずか27%にとどまった。まだ決まっていないと答えた人は18%であり、最も多かったのは決まっている事もあるが決まっていない事もあるという回答だ。これが55%に及び、薄らとした方針は立てられたとしても明確な取り組み方までは見えていない企業が多いのが現状である。
同一労働同一賃金が導入されれば、非正規社員の賃金が現在よりも高くなる事が予測される。しかし制度導入を義務付けられている企業にとっての一番の課題もやはり、非正規社員に支払うべき報酬の問題である。最大の課題は何かという質問に対し、基本給と答えた人は全体の68.8%だった。
制度が導入された後に正社員と非正規社員の基本給の差が出ないようにするには、非正規社員の給料を増やして正社員と同等にするか、もしくは正社員の給料を減らして非正規社員と合せるしかない。だが後者に至っては多くの場合で論外だろう。非正規社員は正社員よりも稼ぎが少ないという常識を、20年4月までに是正していかなければならない。(編集担当:久保田雄城)