2017年金融庁は金融機関における「顧客本位の業務運営の原則」を示した。これを受け、銀行、証券会社、保険会社は各自「お客様本位の業務運営の方針」を策定している。この方針は主に一般顧客に対するリスク回避や情報開示に関する事が中心となるが、もちろんそれだけではなく国民の資産形成の自助努力をサポートし、高齢者や障がい者に対する配慮などサービス全般にわたる取り組みである。
金融庁は今年3月末時点での障がい者等に配慮した取組み状況についてアンケート調査を実施し、6月12日にその集計結果をとりまとめ公表している。アンケート対象保険会社は生命保険会社が41社、個人保険を取扱う損害保険会社が32社である。
集計結果によれば、自筆困難者への代筆に関する内部規定の整備率は生命保険会社で100%、損害保険会社で96.9%とほとんどの保険会社で内部規定の整備が完了しているようだ。同行親族等による代筆に関する内部規程の整備率は同様に生命保険会社で100%、損害保険会社で96.8%となっている。代理店職員等による代筆に関する内部規程の整備率は生命保険会社で51.2%、損害保険会社では51.6%と半数超えとなっている。
視覚障がい者への代読に関する内部規定の整備率では生命保険会社が80.5%、損害保険会社が87.5%と8割から9割が整備済みで、この代読の際に個人情報の漏えいが起こらないように特段の配慮を実施している機関の割合は、生命保険会社で84.8%、損害保険会社で89.3%とほとんどの保険会社で実施されているようだ。
さらに、視覚障がい者への対応状況として保険証券、総合通知、その他通知物、送付時の封筒等における点字による対応を可能としている保険会社の割合については、生命保険会社で保険証券の26.8%をはじめ20~30%程度の実施、損害保険会社では保険証券の6.3%など概ね3~6%程度の実施率となっている。
聴覚障がい者への対応として口頭以外での対応を可能としている保険会社の割合は、生命保険会社が90.2%、損害保険会社では100%となっている。対応方法としては筆談やコミュニケーションボードが主なものだが一部手話通訳者の対応を行っているところも存在する。
知的・精神障がい者等に配慮した取組みを実施している割合は、生命保険会社で61.0%、損害保険会社で84.4%となっている。
高齢化の進展の中で老後資金形成の自助による部分のウエイトは高まってきている。この自助のサポート機能を強化するため保険会社などの金融機関の「顧客本位の業務運営」の取り組みは順調に活発化しているようだ。(編集担当:久保田雄城)