東京商工リサーチが銀行の「リスク管理債権状況」調査。2019年3月期の不良債権、「リスク管理債権」は6.4兆億円、0.2%減少。リスク管理債権比率は1.20%、改善傾向。「貸倒引当金」は2.8倍増加。
地方銀行は人口減少や企業の資金需要の減少等によって貸出先を減少させている。これに対して地銀は個人向け不動産融資の貸出シェアを増やして貸出実績の増加を図ってきた。しかし、人口減少の中で賃貸住宅の供給過剰が生じ、空き室率の増大など不良債権化の兆候が高まってきた。
こうした経緯の中、17年には金融庁が「方針」の中で地方金融機関を中心とする銀行貸出の不良債権化の懸念を表明、これに呼応して銀行は個人向け不動産融資の審査態度を硬化させるなど不良債権化の懸念を払拭するよう努力してきている。
7日、東京商工リサーチが国内111銀行(2019年3月期単独決算)の「リスク管理債権状況」調査の結果を発表している。国内111銀行の2019年3月期の不良債権を意味する「リスク管理債権」は6兆4459億円で、前年同期と比べ0.2%と僅かながら減少した。これは14年3月期以降、6年連続での減少で3月期としては過去最低となっている。
前年同期を上回った銀行の数は、大手行7行のうち3行、地方銀行64行で30行、第二地銀40行の13行と合計46行で前年同期の14行の3.2倍と銀行の数では増加となった。
「貸倒引当金」の積み増しでは、大手行で2行、地方銀行が36行、第二地銀19行の計57行となり、前年20行の2.8倍とやはり増加している。リスク管理債権の総額は減少している一方で、貸倒引当金の積み増し銀行が増加していることは銀行間で不良債権状況に格差が生じていることを暗示し、今後の銀行の取引先への支援がどう展開するか注意が必要だ。
ちなみに「貸出金」合計は537兆1564億円で前年同期比5.0%増と8年連続で増加、91%の101行で貸出金を伸ばし、利子率については1.3%で前年より上昇しており、不良債権化懸念を背景に低金利競争から利率水準の適正化の方向に転換している様子もうかがえる。
業態別での「リスク管理債権」は、大手行が前年同期比12.9%の減少、第二地銀も2.0%の減少である。一方、地方銀行は8.0%の大幅な増加であるが、不正融資が明らかになったスルガ銀行分を除くと0.8%の減少となっており地銀でも改善傾向が見られる。
リスク管理債権が増加した銀行は地域中小企業を主要な取引先とする地銀での増加が目立つ。この背景は貸倒引当金の増加、金利上昇も同じであろうが、中小の業績改善が遅れており先行き不透明感が高まっているためと推測できる。(編集担当:久保田雄城)