自動運転車の公道走行を可能にする改正道路交通法が2019年5月28日の衆院本会議で可決、成立した。緊急時にドライバーが手動で運転できることを前提に、自動運転車の運転中にスマートフォンや携帯電話を操作することが可能になる。
これまでの道交法では常に運転者がステアリングやブレーキを操作できる体勢が求められていたが、自動運転中は走行中にある程度ほかの作業は認められるようになるようだ。
ところで自動運転(ADS)は、その自動化された機能によって1~5レベルに分類されており、それを「自動運転レベル」として区別される。
自動運転レベルは当初、「米運輸省道路交通安全局(NHTSA)」の定義が世界的に採用されていたが、NHTSAが米国「自動車技術会(SAE)」が示した基準を2016年に採用した、現在はこのSAEの6段階の自動運転レベルの定義がグローバルスタンダードとなった。現在、SAEの自動運転レベル6段階の定義は、2016年9月発行の第2版で示されている内容が最新だ。今後の改訂で、定義が変わっていくことも予想される。
日本では2018年2月、日本の公益社団法人「自動車技術会(JSAE)」がこの第2版の日本語翻訳版を発行した。詳細はJSAEのHPで閲覧可能だ。運転自動レベルの定義が英語ではなく日本語で説明されており、日本政府や業界で日本語翻訳版の定義文章が引用されている。以下、自動運転レベルを再度整理する。
【レベル1】
ハンドル・アクセル・ブレーキ操作のうち、ひとつを自動化したレベル。車線逸脱時のステアリング補正機能、あるいは先行車との距離を一定に保つための自動スピード調整機能のいずれかが備わっており、一般的には「運転支援システム」と呼ばれる機能だ。
【レベル2】
ハンドル・アクセル・ブレーキ操作のうち、複数を自動化したシステム。車線逸脱時のステアリング補正、先行車との距離を一定に保つための自動スピード調整機能が備わっており、レベル1と同様に「運転支援システム」と呼ばれている。
【レベル3】
ここレベルから実際に「自動運転」と呼ばれる段階で、高速道路など特定の場所ですべての運転を自動化するが、緊急時は運転者の操作が必要となる。緊急時やシステムの動作が困難となった場合以外、すべての操作を自動で行なう。レベル2との大きな違いは、原則的にはシステム側の責任において全ての自動運転が行われるという点だ
レベル3では、緊急時には運転手がシステムに代わって運転操作を行うため、運転手が運転操作を代われる状況かを常に監視する「ドライバーモニタリング技術」が求められる。AI技術の重要度も増す。
【レベル4】
一定の環境や条件下で、すべての運転を自動化したもの。基本的にレベル3と同じだが、緊急時にもシステムが自動対応するため、運転者の操作は必要ない。レベル3とは違って緊急時にも運転手が対応せず、全てシステム側が自動運転の主体として責任を持つ。つまり運転手は運転操作に参加することは想定されていない。ただ、レベル4の定義は「限定エリア内」での自動運転とされている。
【レベル5】
すべての運転を自動化したもの。条件に関わらず運転に関わる全ての操作を自動で行う。
レベル4・5は販売にまで至っておらず、コンセプトカーの段階に留まっている状況だ。ちなみに「レベル0」という概念もあり、運転支援装置が一切備わっていない従来型の自動車一般を指す。
今回の改正道交法では、道路の種類や天候など一定の条件のもとでシステムが運転し、緊急時にはドライバーが操作する「レベル3」の自動運転を対象に、ルールを整備することとした。政府は2020年をめどに「レベル3」に対応する技術の実用化を目指している。8月に発売される予定の新型「日産スカイライン」に「レベル3」の自動運転システムが搭載される見込みだ。
改正道交法によれば、緊急時に手動運転にすぐに切り替えられる状態であれば、スマホ操作などの「ながら運転」を認める。ただ、ドライバーには交通ルールを守る「安全運転義務」が課されることは変わらない。飲酒も引き続き禁止する。同法は参院で先に審議し、4月12日の参院本会議で可決、衆院に送付されていた。(編集担当:吉田恒)