中国への進出企業が減少傾向。小売業で目立つ。背景に米中摩擦も

2019年06月07日 06:21

画・中国への進出企業、減少傾向。小売業で目立つ。背景に米中摩擦も。

帝国データバンクが日本企業の中国進出動向調査の結果を発表。進出企業は2019年5月時点で1万3685社。16年から249社減少。大企業では増加、中小は減少。小売業での減少が目立つ。背景に米中摩擦も。

 アメリカのトランプ大統領は先月5日に対中国関税を25%に引き上げることを発表した。先月30日、トランプ大統領は記者団に対して「企業は悪影響を避けようとして中国を離れている。企業はベトナムや他のアジア諸国、さらには米国に移ってきている」と語ったことが報道された。日本の多くの企業も中国に進出しており、中核的企業は中国の様々な経済戦略と深く関わっている。当然のことながら日本企業への影響も心配される。

 こうした動きに関連し、帝国データバンクが自社の保有するデータベースから5月時点での日本企業の中国進出動向について調査を行い、31日にその結果を公表した。

 レポートによれば、中国に進出している日本企業は今年5月時点で1万3685社、16年の調査時点から249社減少し、最も進出社数が多かった12年の1万4394社と比較すると709社減少している。

 新たに進出した企業を見ると、現地生産工場を開設したものや日本のノウハウを中国で展開する小売企業、また既存企業では物流の増加に伴う設備増強など中国市場の成長を見込んだ事業所開設などを積極的に進める企業も少なくない。一方、撤退した企業では中国市場での人件費の高騰や為替安などによるコスト増により採算性が悪化し、日本国内や、タイなどASEAN諸国へ生産設備を移転させたケースが多いようだ。

 業種別に進出企業数を見ると、「製造業」の 5695社が最も多く、次いで「卸売業」の4495社、「サービス業」1689社、「小売業」472社の順となっており、これら上位4 業種はいずれも16年と比較して減少している。製造業では完成車部品や電機部品製造の業種が多いが、これらが減少している。他方、物流を担う「運輸・通信業」は16年と比較し1.2%増加しており、これは「越境EC」など中国国内でのEC市場の拡大が背景にある。他の増加業種は「金融・保険業」、「建設業」、「不動産業」などである。

 年商規模別で見ると、年商10億円を境に中堅・中小規模になるほど減少傾向であるのに対し、10億円以上では規模が大きくなるにつれ増加傾向が見られ、規模により対応が異なるようだ。

 JETROの調査によれば日本企業の中国からの米国への輸出分は約6%にとどまっており、今のところ米中貿易摩擦の影響は小さいようだが、景況減速など様々な要因もあわせて不透明感が強まっていることだけは間違いない。(編集担当:久保田雄城)