ここ数年、待機児童の問題、保育施設不足の問題が再び社会問題化しはじめた。背景には景気回復に伴って子育て中の主婦の就労機会と意欲が増大したことと大規模集合住宅の建設ラッシュで特定地域での保育施設の需給バランスが急速に崩れたことがある。
自治体の運営する保育施設では資格を有する保育士の長期雇用による確保が必須だが、保育士の就労条件が保育士の生活環境から言って十分でないと言う実情もあり、各自治体ではこの点で苦戦しているのが実態だ。にわかに保育士の待遇改善が課題にのぼったが十分な対応が遅れているのが現状である。
市場調査業のインテージリサーチが全国の16~79歳の男女1万803名を対象にインターネット調査「幼児教育・保育の無償化に関する意識調査」を3月に実施、その集計結果を6月28日に公表している。
調査結果によれば、「あなたは、認可保育所の無償化についてどのように感じるか」という質問に対して、「賛成」および「どちらかといえば賛成」と答えた者の割合の合計は68.3%となり、7割近い者が「賛成」と回答している。家族形態別に見ると、未就学児と同居している世帯で「賛成」、「どちらかといえば賛成」の合計が男性では88.4%、女性では85.5%と全体平均より高く、やはり直接恩恵を受ける可能性のある世帯で無償化に肯定的だ。
賛成と答えた者に理由を尋ねたところ、「少子化対策として有効だと思うから」が29.8%で最多となっている。しかし未就学児と同居する世帯のみで見ると「経済的な負担が減るから」という理由が約6割に上り、やはり当事者にとっては経済的な負担軽減から無償化を支持しているようだ。
逆に保育無償化に反対と答えた者にその理由を聞いた結果では、「保育士の処遇改善を優先すべき」が27.9%と最も多く、これは未就学児と同居する当事者でも同様で、保育士の処遇改善を訴える声が最も多くなっている。待機児童問題の背景に保育士の待遇問題があることが既に多数報道されており、当事者だからこそ保育士の働き方改善に対する問題意識が高い者も少なくないようだ。
幼児教育・保育の無償化が10月より予定されていが、無償化は高所得者ほど実質恩恵が多いという指摘もあり、「無償化が本当に子育て世帯の負担軽減につながるのか、また子育て世帯の間の経済格差を是正するのかという点について今後、検証していく必要がある」とレポートでは指摘している。(編集担当:久保田雄城)