今や、個人の趣味からビジネス、産業分野、各種研究や調査まで、活躍の幅を広げているドローン。
ITメディア事業を展開するインプレスホールディングス〈9479〉のシンクタンク部門であるインプレス総合研究所の調査によると、2018年度の日本国内のドローンビジネスの市場規模は、前年度の503億円から85%増の931億円と推測され、2019年度は前年比56%増の1450億円にまで拡大するとみられている。2024年度にはさらに、18年度の約5.4倍にあたる5073億円に達すると見られており、その勢いはまだまだ衰えそうもない。
機器の小型軽量化や性能の向上、加えて操作自体も簡単で扱いやすくなってきたことで、農薬散布や物流、土木測量や設備点検、災害調査などへの導入が加速している。そして、いよいよB to Bだけでなく、B to C分野の消費者向けサービスなどにも活用の幅が広がり始めた。
その一例となる顧客サービスを、住宅メーカー大手の積水ハウス〈1928〉が8月から開始すると発表した。
同社が発表した戸建住宅の新たな点検システム「スマートインスペクション」は、同社が実施している10年ごとの定期点検の際、半自動操縦ドローンに加え、床下点検ロボット、小屋裏点検ロボットカメラを用いて高精細な画像を撮影する。これをクラウド経由でオフィスに共有し、専門スタッフが遠隔で診断を行うというものだ。複数の先進機器を組み合わせて遠隔で診断する住宅点検システムは、住宅業界初だ。
今までの機材では撮影することができなかった屋根上面などにおいても高精細な画像診断が行えるだけでなく、顧客の住宅に滞在する時間の短縮など顧客満足度アップに繋がるという。さらには危険を伴う高所作業や床下などでの負担の大きな作業がなくなるため、高齢者や女性などの雇用機会の拡大と建設業界の課題である人手不足の解消にも一役買いそうだ。
インターネット通販大手の楽天〈4755〉も、神奈川県横須賀市の無人島「猿島」で、同島に休暇などで滞在する人向けに食材などを、小型無人機ドローンで運ぶサービスを始めると発表し、話題を呼んだ。今後も過疎地域など、他地域でも順次実施していく意向で、物流の人手不足を補う考えだ。
ドローンは、今後ますます、私たちの生活の中で身近な存在となってくることだろう。ただ単に便利というだけではなく、労働者の安全を守り、顧客満足もアップさせ、さらにはその先にある社会課題解決にも役立ち、社会の発展にもつながる。ドローンの可能性は「便利さ」の向こう側に、まだまだ広がっていきそうだ。(編集担当:藤原伊織)