進化し続けるドローン技術は意外なところにも応用されているようだ。経済産業省と国土交通省は送電線や鉄塔の点検にドローンを用いる環境の整備に取り掛かる。今のところ送電線点検にドローンを用いることにはいくつかの課題があるが、経済産業省が開催する研究会などにおいて解決策を模索することになる。
現在各電力会社が所有する送電線や鉄塔の点検は、今のところ作業員が実際に登って行っている。しかし作業員が登ること自体危険が伴うこと、目視では確認しきれないことなど課題は少なくない。加えて近年多発する自然災害などの際には作業員が立ち入ることすら危険な状態が生じ得る。そのようなケースでは送電線や鉄塔の点検・修復が行えずにライフラインの普及が大幅に遅れることも想定される。そうした事態を避けるため、国が各企業の持つノウハウを結集してドローンを送電線点検に利用するための研究会を発足させたのだ。
送電線や鉄塔の点検にドローンを用いることには多くのメリットがある。まず作業員の安全が守られることだ。鉄塔に登らずに点検作業を行えるため、鉄塔に登るリスクから守られる。さらに目視では確認できなかった部分を撮影して修理の必要性の有無を判断できることも大きな利点だ。これまでは風の影響などによりドローンの撮影した写真が不鮮明であるなどの問題も出ていたが、関西電力<9503>の協力のもと行われた実験ではセンサーを用いて送電線との距離を保ちつつ写真を撮影することでより鮮明な映像を取ることが可能であることが実証された。
今後国としては、大手電力会社を含め企業の持つ技術をドローンの開発会社と共有することにより官民一体となったドローンによる送電線・鉄塔の点検のための環境整備を行っていきたいところだ。ただしドローンによって点検が行えても、損傷があった場合に修復するのはやはり人の手になる。今後は大規模な自然災害などに備えて、ドローンを含め機械による修復についても検討が必要だろう。(編集担当:久保田雄城)