人口減少の影響で地方を中心に空室率の上昇、募集期間の長期化が生じている。人口減少による資金需要の低下の中で地域銀行が個人向け不動産融資を活発化させたため賃貸住宅は供給過剰ともいわれる。空室率上昇などの状況を受け不良債権化の懸念から既に個人不動産融資は抑制的となっている。こうした背景の中、個人向け賃貸の仲介市場の動向も気になるところだが、当該市場の規模は緩やかに縮小傾向というものの業績では堅調な推移が見られるようだ。
20日、矢野経済研究所が「個人向け不動産仲介市場に関する調査(2019年)」の結果を公表している。レポートによれば、総務省「住民基本台帳」および国交省「建築着工統計」等から推計された全国の個人向け不動産賃貸仲介件数は2018年に198万件、前年17年の202万件より4万件の減少となっている。13年が214万件であったので仲介市場の規模は件数で見ると緩やかな減少トレンドとなっている。
人口減少により全国的には市場縮小傾向であるが、都市部においては人口流入が続いており個人向け居住用賃貸物件に対する入居ニーズは拡大しているようだ。とはいえ人口減少を背景に仲介件数自体は縮小傾向のため不動産仲介事業者の間では顧客需要を第一義としたサービス水準の向上で競争が激化しているようである。
サービス向上の内容は高付加価値サービスを提供することと仲介業務の実務的な質を向上させることである。こうしたサービス向上の努力の中心はIT化・電子化によるもので、インターネット上で公開する物件の見せ方を工夫するなど物件情報を顧客にわかりやすく提供するなど情報発信サービスの水準を向上させることが重要視されているようだ。
また賃貸手続きでの利便性の向上も図られ、例えば重要事項説明をパソコンやテレビ、タブレット等の端末を利用して対面と同様の水準で説明を受け、あるいは質問を行える「IT重説」など業務の電子化が既に始まっている。
今後は各種仲介事務の電子化により業務の効率化が実現すると期待される。全国的には市場縮小傾向の中、主要な賃貸仲介事業者はそれぞれ都市型戦略を実行していることから、「人口の動きのある都市部を中心とした市場形成が今後も続く」とレポートでは予測している。(編集担当:久保田雄城)