契約と言えば契約書を作成することで成立し、当事者双方がその写しを保管することで以後双方の行為を統制することだ。従前は契約内容が記載された契約書という紙に記名・捺印し、手渡しや郵送で双方が保管するというのが一般であった。
インターネットが発展・普及した2000年以降は「電子署名法」や「電子帳簿保存法」など電子契約に関する法の整備が行われ、また電子署名の技術やクラウドストレージなどの手法も普及し電子契約を導入しやすい環境となっている。
現在企業ではAIの時代をにらんだクラウド化や仮想化のためのDX(デジタル変革)IT投資が活発化している。JIODECの18年の統計では電子契約サービス導入済み企業は4割超で検討2割超も含めると既に6割超えの企業で電子契約サービスが導入されていると推測できる。
6月18日にITコンサルタント業のITRが日本国内の電子契約サービス市場の現況と動向、将来予測についてレポートを発表している。
レポートによれば、2017年度の電子契約サービス市場の規模は売上額ベースで21億5000万円、前年度比79.2%の増加と極めて高い成長を記録している。18年度の推計値は約37億円、同71.2%増の増加と引き続き高い成長を維持している。
電子契約はインターネット経由で行うことができ書類作成や保管管理ステップを省略でき、電子署名とタイムスタンプの利用で印紙も不要なため契約業務の効率化・コスト削減を実現する。このため近年のクラウド環境整備も相まって、電子契約サービスを導入する企業が急増しているとともに、その需要を見込んだ参入ベンダーも増加傾向で推移し本格的な市場形成期を迎えている。この為、国内電子契約サービス市場は今後も引き続き高い成長が期待できるとレポートでは見ており、17年から22年の年平均成長率を40.2%と予測している。
ITRシニア・アナリストの三浦竜樹氏は「現時点ではB2B用途での導入が多く見られる」「今後は金融や保険などのB2Cでの契約業務にも広がる」、さらに「紙(書面)での契約が法律で定められている定期建物賃貸借契約や投資信託契約の約款などでも法改正の動きが進むと予想され、今後も電子契約サービス市場の拡大が期待される」とコメントしている。
確実に日本の伝統実務慣行である押印が不要な時代が直ぐそこまで来ているようだ。(編集担当:久保田雄城)