多発している自然災害。普段使いの中から、災害に強いまちづくりを

2019年10月20日 11:55

画・「30年以内に震度7の地震が来る」半数。自宅の耐震性「わからない」3分の1。

もしも自分の町で災害が発生し、被災してしまった時、その後の生活を守るため、不安を少しでも減らすために、普段の生活の中で災害に強いまちづくりを考えていきたいものだ

10月12日夜から13日未明にかけて東日本を縦断し、記録的な暴風や大雨をもたらした台風19号。関東や東北、信越を中心に甚大な被害が拡がり、今もなお、停電が続く地域も多い。被災地域の一日も早い復興を願うばかりだ。

 思えば、昨年も自然災害の多い年だった。北海道胆振東部地震、大阪府北部地震、島根県西部地震、西日本豪雨、台風21号及び24号の直撃、記録的な猛暑など、数々の自然災害に見舞われ、その年の世相を漢字一文字で表す「今年の漢字」にも「災」の字が選ばれたほどだ。

 度重なる災害の経験から、日本人の防災意識と防災知識は高まっている。東日本大震災などの経験から、想定外、規格外の事態をも想定し、備えるようになった。しかし、それでも自然の大きな力に抗うことは容易ではない。
 
 被害を最小限に留めるためには、災害が起こる前の備えも大事だが、災害が起こった後の対策も非常に重要になってくる。地震被害でも台風被害でも、被災地では水不足や停電などが、憔悴しきった被災者たちを苦しめてしまう。

 例えば、一つの対策として、自家用車を「災害に強い車」にすることも検討すべきかも知れない。これまで、自家用車選びの指標は、デザイン性や燃費性能、快適さなどが主流だった。ところが、電気自動車の登場によって、もう一つの選択肢が生まれた。それは、非常時の蓄電池がわりとしての活用だ。一般的な家庭で一日に使用する電力量は10Kwh程度といわれているので、62Kwhの大容量バッテリーを搭載している日産〈7201〉の新型「リーフe+」などを利用すれば、節約すれば1週間近くは蓄電池で生活することができる。もちろん、常に満充電された状態とは限らないが、数日間の電気が賄えるとなれば、非常時の不安はかなり軽減されるはずだ。

 また、このリーフを活用して災害に強い町づくりを進めている企業もある。木造注文住宅メーカーのアキュラホームは、茨城日産自動車株式会社と 災害連携協定を締結し、同社の展示場であるつくば支店オフィス棟「住まいと暮らしサロン」にリーフを常備。停電時には、近隣住民のスマホの充電など電力供給に役立てるほか、施設自体も災害発生時には備蓄品の提供や一時避難所として解放する。 万が一電力供給ができなくなった際にも、災害連携協定を結んでいる茨城日産自動車に要請することによって、新たな電気自動車の貸出が行われるという。ちなみに同社は、これまでにも 埼玉県久喜市の住宅展示場「モラージュ菖蒲」でも同様の取り組みを開始している。

 さらに、災害発生時に必要な「情報共有」の点では、複写機やレーザープリンターなどの製造メーカーであるリコージャパンがスカパーJSATと共同で、「ビジュアル情報衛星通信システム」を開発し、2018年3月から提供を開始している。これは、災害発生時に、発災現場、対策本部、医療機関といった救護活動の最前線を安定した衛星回線でつなぎ、映像や音声などを通じて迅速に情報伝達や情報共有を支援するシステムだ。同社では、このシステムが特別な訓練やマニュアルを必要とするものでなく、 テレビ会議やWeb会議システムなど、企業などで日常的に利用しているシステムを活かすことを重視しているという。

 今、こういった企業の災害への取り組みに共通しているのが、普段利用しているリソースや施設、道具、技術などを災害発生時や非常時に有効的に役立てるというものだ。電気自動車にしても衛星通信システムにしても、普段使い慣れたシステムであれば、災害発生時の混乱した状況下でも比較的冷静に、そして迅速に対応することができるだろう。また、特別に準備したり設営する必要もないため、予算的な面でも導入しやすい。

 残念ながら、自然災害は人の力では避けようのないものだ。もしも自分の町で災害が発生し、被災してしまった時、その後の生活を守るため、不安を少しでも減らすために、普段の生活の中で災害に強いまちづくりを考えていきたいものだ。(編集担当:藤原伊織)