人材不足に悩む建設業界。課題解決に向けて動き出した、大手メーカーの技能訓練施設

2019年11月03日 12:27

ベトナム

積水ハウスはベトナムに住宅メーカー初となる技能訓練施設を開設する

 日本の建設業界は今、深刻な人材不足に陥っている。厚生労働省が今年2月に発表した「一般職業紹介状況」によると、2018年の建設技術者(建築・土木・測量技術者)の有効求人数は68万8,095人。直近で最も低かった2015年に比べて17.6%も需要が増している。ところが、2018年の有効求職者数は11万1,403人。有効求人倍率は、2018年平均で6.18倍となっており、2001年以降の最高値を記録している。

 他の職種や職業と比較しても、この数値は突出している。建設技術者は今や、日本で最も人材の確保が難しい職種といっても過言ではないだろう。

 さらに、建設技術者の減少傾向は今後、さらに加速していくことが懸念されている。このままでは近い将来、建設の依頼はあっても受注できないという建設会社も増えてくるだろう。人材の確保と育成は建設業界全体にとって、何よりもまず最優先させるべき喫緊の課題なのだ。当然、建設関連企業もすでに様々な対策に乗り出している。待遇や職場環境の改善や省工数化の促進などをはじめ、作業ロボットも現場導入に向けて開発が進められている状況だ。

 また、2019年4月1日から「特定技能」を新設する改正出入国管理法が施行され、外国人労働者の受け入れが拡大されたことを受け、日本国内の技術者だけでなく、外国人労働者を積極的に採用する企業も現れ始めている。

 中でも、戸建注文住宅からタワーマンションまで幅広く手掛ける住宅メーカー大手の積水ハウス〈1928〉は、外国人技術者の育成と確保に積極的な姿勢を見せている。

 10月3日には、日本の企業や大学と海外の企業や大学の産学連携支援を行う一般社団法人JIC協同組合支援協会と業務委託契約を締結。現地送出し機関と連携することで、2019年11月にベトナムのハノイに住宅メーカー初となる同社住宅建設工事向けの技能訓練施設を開設することを発表した。加えて、同社では技能実習生および日本側の受入れ企業となる積和建設や同社施工協力会社へのサポートを綿密に行うことで、ベトナムからの技能実習生の受入れ体制を強化し、国内の建築現場での施工力の確保を図るという。同社では、この施策によって2022年には積和建設や同社協力会社でのベトナム人の登用人数を約300人とすることを目指している。

 注目したいのは、今回の積水ハウスの取り組みによって、建築業界のみならず、日本における外国人労働者に対する考え方が大きく変革されるかもしれないという点だ。

 これまで外国人労働者といえば、「安い労働力」という見方が蔓延していた。しかし、今回の同社の取り組みでは、ベトナム現地での家族説明会の開催や現地訓練費用の全額負担などで支援するとともに、基礎技術のみならず、語学やマナーに至るまで、技能実習生が安心して来日できる環境を提供するところから始めている。また、受入れ後も日本人同様の賃金体系に加え、技能検定合格に向けた支援や、24時間対応のサポートシステムなど、技能実習生に対する手厚い支援を行う。つまり、決して「安い労働力」などではないのだ。むしろ、日本人をそのまま国内で雇用するよりもコスト高になり兼ねない。単純に人材不足の数を補うための施策ではなく、質の高い人材育成を目指しているのが非常に興味深い。

 日本ではなく現地に技能訓練施設を設けたことで、技能実習生は自国に居ながら、技術や理念などを学ぶことができるので、ストレスも少ないだろう。また、企業側にとっても、来日後の研修時間の削減が見込め、即戦力として受け入れることができる。

 いくら人材不足だからといっても、安易に海外からの労働者を招くことに抵抗を感じてしまうという消費者は少なくないだろう。しかし、それでも企業側としては、海外からの労働力を必要としているのが現状だ。そしてこれは、建設業界だけでなく、農業や漁業、飲食料品製造業など、改正出入国管理法の新たな在留資格「特定技能」の対象となった人材不足が深刻な14業種にとっても共通する課題だ。消費者も安心して、海外からの労働力の受け入れを認められるようになれば、これらの業種の人材不足も緩和されるだろう。そのためには、企業側は優秀な人材を海外から受け入れるための取り組みを行っていることを、消費者にしっかりと伝えていくことも必要なのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)