日本は少子高齢化の人口減少社会で、特に生産年齢人口の減少が著しく、既に深刻な人手不足の状態にある。政府はこうした状況の中で働き方改革など各種施策を講じ、多様性を受容する労働環境を実現することで女性、高齢者そして外国人の労働力を活用し労働力不足を補おうとしている。こうした諸施策を背景に女性、高齢者そして外国人労働者の就労は近年増加傾向となっている。
6日、内閣府が政策課題分析シリーズとして外国人労働者を雇用する企業の実態について取りまとめた報告書「企業の外国人雇用に関する分析-取組と課題について-」を公表している。
報告書の資料によれば外国人労働者の就業者全体に占める割合は、2008年に0.8%であったものが18年には2.2%と、この10年ほどで2.75倍、約3倍にまで増加している。
人手不足感による外国人雇用の説明力を限界効果で計った結果では、最近になるほど人手不足感での外国人雇用の説明力が高まっており、近年の外国人雇用の増加は人手不足を背景にしたものが中心と推測することが出来る。
賃金に関し、16年データで外国人正社員と日本人正社員の従業員規模別の賃金カーブを比較した結果では大きな違いは見られず外国人と日本人では賃金格差はないようだ。賃金を決定する要因について分析した結果では、就労経験年数や学歴だけでなく日本語能力が高いことが賃金レベルを決定する大きな要因になっており、これが外国人労働者の賃金決定の大きな特徴となっている。
19年でのデータを用いた高度人材と新卒留学生の定着率に関する分析では、定着率が上昇する要因として、高度人材では「年功にとらわれない昇給・昇進の促進」、新卒留学生では「日本語教育等の取組」、双方で「コミュニケーション」が大きくなっており、外国人材とのコミュニケーションが容易な企業ほど定着率が高い傾向がみられる。
また、外国人雇用と他の多様な人材活用との相関を見ると、外国人雇用が増加している企業で従業員全体の増加、女性正社員・管理職の増加、正社員の中途採用の増加、65歳以上採用の増加が見られ、報告書では「外国人労働者は、日本人労働者との間で代替的な関係ではなく、補完的な関係にあることが示唆された」としている。(編集担当:久保田雄城)