トヨタ、軒並み低迷の業界で、2019年上半期決算で史上最高益を記録するも……

2019年12月01日 10:34

Lexus ES

世界的な自動車不況は中国でも吹き荒れるが、レクサスだけは売上を伸ばしている。昨年導入したミッドサイズFFセダン「ES」が好調だという

 米中貿易摩擦、中国経済減速、円高。これらが多くの国内製造業を苦しめ、2020年3月期の上半期決算で下方修正圧力となっている。

 ところが、そんななかでトヨタは別格の強さを見せた。2019年上半期、何と販売台数は463.9万台、連結ベース売上高は前年比4.2%増の15兆2856億円、当期純利益は同じく2.6%増の1兆2750億円と、過去最高を更新した。自動車を取り巻く経営環境に晴れ間は見えていない、にもかかわらずである。

 自動車を取り巻く経営環境とは販売先主要国での環境規制への対応や、競合他社に勝つ性能向上のために、開発資金はいくらでも欲しい。トヨタは、TNGAと呼ぶ共通プラットフォームによる開発の合理化、部品コストの削減などによって、利益を生んだ。

 また、販売台数の増加も売上に貢献した。トヨタは、この上半期、販売台数でも過去最高をマークした。中国やインド、インドネシアなどのアジア市場は新車需要が減少傾向、北米市場でも若干縮小している。自動車主要マーケットの市場環境は厳しいのに、である。

 国内製造業で自動車そのもの、あるいは関連する企業で決算を下方修正した代表例は、三菱自動車(予想営業利益73.2%減)、マツダ(同27.7%減)、アイシン精機(同63.5%減)、日本精機(同59.6%減)、東京ラヂエーター(同44.5%減)などである。

 トヨタは、この向かい風のなかで販売台数を伸ばした。新型車の投入が効いた。中国では、2018年に発売したレクサスの新型ミッドサイズFFセダン「ES」や今年発売した新型カローラが好調だ。

 ところが、この好決算に「誰かが犠牲を強いられているのでは……」との声も挙がった。たしかに、トヨタのメガサプライヤーであるアイシン精機までもが、上半期減収減益、さらに下方修正を余儀なくされている。そこに「トヨタによる下請け搾取(イジメ)が、あるからでは?」の声が出るのも頷ける。

 「自動車はいま、100年に一度の大変革に直面している」と、トヨタは事ある毎にこのフレーズで会見を締めくくる。

 たしかにクルマをハードではなく、移動のためのモビリティというサービス業態として捉えるMaaS(Mobility as a Service)という考え方が出現して以降、クルマに対する価値感は大きく変化している。消費者にいかなるサービスを提供できるかが問題になる時代が、すぐにやってくると喧伝されている。

 そこで自動車メーカーは、未来のモビリティ業態が主たる業界でも主役として生き残るために、競合他社に勝つ能力を何処に求めるか、生き残りを賭けたビジネスの新たなベクトルを模索している。完成車メーカーはハードよりもソフトの開発に注力し、クルマの商品価値の差別化と直接関係ない「ハード」の開発・製造をサプライヤーに譲ることに繋がりそうだ。事実、トヨタは半導体事業やディーゼル事業をデンソーへ移管している。(編集担当:吉田恒)